映画評「グッドバイ~噓からはじまる人生喜劇~」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり

太宰治最後の小説の映画化だが、序盤のうちに未完に終わったので、映画作者が色々と加えられるというメリットがある。それを生かせるかどうかは映画人の腕次第。とは言っても、本作には、その遺作から作り上げられたケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲があると言っておかねばならない。実際、途中からドタバタぶりが激しくなり顕著に舞台臭く、かつ煩くなって来るのが良し悪し。

文学雑誌編集長・田島周二(=太宰の本名・津島修治のパロディであるのは言うまでもない=大泉洋)が、青森にいる娘と一緒に暮らしたいと思い始め、その為には現在交際中の女性たちと別れる必要があると考える。そこで雑誌関係の交流する作家・漆山連行(=うるしやまれんぎょう=松重豊)と相談し、美人すぎる偽物の妻を紹介し彼女たちを狼狽させてグッドバイする作戦を立てる。
 その為に選ばれたのが、普段小汚い格好をしている担ぎ屋娘・永井キヌ子(小池栄子)が本当は物凄い美人であるのに目を付け、実行に移す。最初は花屋の保子(緒川たまき)、次は挿絵画家のケイ子(橋本愛)、そして内科医の加代(水川あさみ)。

原作は二人目が紹介されたところで終わったので、その後の展開はサンドロヴィッチのアイデアである。
 三人目の女医にトライすると思わぬ反撃を食らう。彼女は本当の妻・静江(木村多江)から手紙を受け取っているし、田島にも三行半の電報が届く。それをキヌ子が先に読んでしまい、結果的に全員の女性から総スカンを食らってしまうというズッコケである。

が、一連の事件の前に彼が傾倒したキヌ子とは未だはっきりした関係を示されたわけではなく、再度トライしようとする矢先に強盗に襲われて死んでしまう。些か早い時間での死去なのでその後に色々と、と言いつつ、実際にはかなり限られた幕切れへの展開が予想される。とは言え、予想通りに映画が展開するのは必ずしもマイナスではない(勘違いしている人が多いが、全く予想もつかない展開こそ本当は問題なのだ)。予想というのは周二が死んでいず、何らかの形でキヌ子と関係を築くという展開で、実際その通りになる。

しかるに、娘が妻と良い関係になった連行に親しんだままで終わるのでは中途半端である。恋愛コメディーだからそれで良いではないかと言われるかもしれないが、それなら実際終戦後に作られた最初の映画化(1949年、高峰秀子、森雅之主演)のように富豪令嬢との結婚の為といった理由をこしらえたほうが皮肉が利くのである(その映画版もどんでん返しすることでその皮肉を反故にしてしまうのだが)。

結果的に、見かけほどは味の濃くない恋愛喜劇に終ったと判断する。

ポール・マッカートニーがメリー・ホプキンに提供した「グッドバイ」は名曲です。彼自身のデモも「アビー・ロード・スーパー・デラックス)に収録されていて、なかなか素敵なのであります。

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