映画評「ミッドサマー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年アメリカ=スウェーデン合作映画 監督アリ・ラスター
ネタバレあり

まだるっこいながらも「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年)を継承するオカルト・ホラーとして面白味を見せた「ヘレディタリー/継承」を作ったアリ・ラスターの新作は、またホラー映画である。

両親が精神不安定の妹との無理心中の道連れにされショックを受けた美人フローレンス・ピューが、夏休みに恋人ジャック・レイナーも加わる学生グループと共に、仲間のスウェーデン人ヴィルヘルム・ブロムグレンの故郷で行われる夏至祭見学に出かける。
 ところが、この祭がとんでもない儀式の連続で、老男女が一人ずつ崖から飛び降りて死ぬ。男性が死なないと、頭を叩き割って殺す。この村では死んだ人間と同じ数の子供が生まれるという輪廻転生的な考えが脈々と継承されている。最後まで観てもよく解らないところがあるのだが、逆に生まれる子供の数に合わせて死ぬ人間の数が決まるのかもしれない。
 この流れに従って、メイクイーン(夏至祭なのに5月というのも何だか変)に選ばれるフローレンス嬢と実は学生を連れて来るのが役目であったブロムグレン以外の4人が生贄に捧げられてしまう。

リメイクもされた伝説的映画「ウィッカーマン」系列の、独自の習慣・風俗を続ける隔絶的な村に入り込んだ人々の恐怖を描く内容は、本数こそ多くないとは言え、新機軸とは言い難いし、この監督の悪い癖で、前半が良く言えば丁寧すぎ、悪く言えばまだるっこい。
 老男女(男性はかつての美少年ビョルン・アンドレセン)が飛び降りる、開巻後1時間の辺りで漸く映画の進む先が見えて、俄然面白くなってくる。とは言いながら「ヘレディタリー/継承」終盤を拡大化しただけのような印象もある為その面白さにも自ずと限界がある。

映画の実力とは関係なく、社会人類学者J・フレイザーの膨大な著作「金枝篇」が五月祭に関して細かく紹介していて、それを思い出しながら観た為興味深いところも多い。勿論ここまで残虐なことは行われないが、欧州の祭も原初的には未開の地で行われているものと変わらないと思わされたもので、その根源に現代人が想像もつかない奇異性(現代の常識から言えば、野蛮と言っても間違いないだろうが)があることを、「金枝篇」とは違うアングルでこの映画は教えてくれるのである。

作劇的には、148分という長尺なのに、フローレンスがアメリカで受けたトラウマ(実はこの序章部分が映画的には一番面白い)が殆ど劇的に利用されていないのが不満。彼女の見せる嫌悪や恐怖が、次の瞬間に同調・歓喜に変わってしまうのも理解を超えるものがある。

昨夜の地震、当地は震度4。震度そのものより長さに少々怖さを覚えた。

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