映画評「素晴らしき哉、人生!」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1946年アメリカ映画 監督フランク・キャプラ
ネタバレあり

たぶん3回目の鑑賞で、前回はブログを始める2、3年前だったと思う。
 アメリカでは終戦直後ケイリー・グラント主演「気まぐれ天使」(1997年製作の「天使の贈りもの」のオリジナル)など天使映画が少し流行ったが、この作品がブームの嚆矢だったのかもしれない。戯曲では「リリオム」という天使ものが戦前何度か映画化され、戦後のミュージカル版が「回転木馬」である。

本作は、当時全くヒットしなかったらしいが、現在は若者にも人気のある不朽の名作として様々な作品でよく引用されている。

クリスマス・イブの夜、ジョージ・ベイリー(ジェームズ・スチュワート)という青年が自殺しようとしていると知った神様が、二級天使のクラレンス(ヘンリー・トラヴァーズ)を派遣する。その前段として神様が彼に語る昔話が暫く紹介される。即ち、
 少年時代に弟を救った話、住宅金融を経営する父の急死を受けて海外に飛び出る夢を捨て会社を引き継ぎ、少女時代から彼を慕ってきたメアリー(ドナ・リード)との結婚を経て現在に至った後、強欲な不動産業ポッター(ライオネル・バリモア)が自分に不利益をもたらす彼の仕事を潰そうとあれやこれや画策、叔父(トーマス・ミッチェル)のちょんぼから偶然手にした8000ドルをネコババする。これにより法律的に追い込まれたジョージは自殺しようと思い立ったのである。
 が、ここにクラレンスが現れ、生まれなかったら良かったと言うジョージにその仮定による世界を見せる。何とも不幸せな世界になっているのを知り思い直すと実際の世界に戻り、喜んで家に帰ると、彼が昔施した善意に感謝した人々から寄付が大量に集まるのである。

クリスマスを利用した因果応報譚「クリスマス・キャロル」の逆ヴァリエーションで、善意が善意により報いられる幕切れが大いなる感銘をもたらす。生意気盛りだった昔は出来過ぎのお話という印象で多少鼻白んだが、今回は妙にこの終幕に感涙してしまった。年を取ると涙もろくなるというのは本当だと思う。しかるに、同じような流れであれば同じように感銘するかと言えば、決してそんなことはないので、本作の構成と見せ方が巧いということになる。
 昔からのご贔屓ジェームズ・スチュワートは、こういうフランク・キャプラ流の理想主義的人物像に誠にふさわしい善意を感じさせる俳優だから、この感銘の大きな要素として彼の主演が果たすところも大きかったであろう。

キャプラの作品としてはやや緩いところがあり、戦前の傑作群にやや及ばないと思われるが、非常に高いレベルでの問題である。この時代のドナ・リードの清純な美しさを見るのも目の保養。

ウィル・スミス主演に「素晴らしきかな、人生」という邦題の作品がある。文字で表記すれば区別できるが、口頭では区別できない。内容に共通する部分があるとは言えリメイクでないのだから、やめてほしいなあ、こういうのは。

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