映画評「ビリーブ 未来への大逆転」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ=中国=カナダ合作映画 監督ミミ・レダー
ネタバレあり

アメリカ連邦最高裁の現役判事の一人ルース・ベイダー・キンズバーグの伝記映画である。
 彼女はトランプが大統領になった直後引退が囁かれていた記憶があるが、Wikipediaによれば、トランプが大統領でいる間は辞められないと言っているらしい。

ところで、近年僕は、ポリティカル・コレクトネスやフェミニズムに傾く映画に批判的だが、文化的保守を自任するも個人主義者だから当然人権を大事にする。本作のように女性の権利拡大に頑張る人々を直球的に描けば全然文句など言わない。古い童話を改変するなどしてフェミニズムを姑息に展開するのがいかんのである。

ルース(フェリシティ・ジョーンズ)は、1950年代後半にハーバード大法科の同窓である夫君マーティン・キンズバーグ(アーミー・ハマー)がニューヨークに就職する為、学長(サム・ウォーターストン)の猛反対を押し切ってコロンビア大に移籍する。
 彼女の移籍に関して大学の名誉の為に反対する学長の態度からして既にビックリさせられるわけだが、彼女が名門大学を首席で卒業したにも拘らず、女性というだけの理由(原題On the Basis of Sex)で法律事務所に全て断られることには茫然とする。僅か60年前、欧州ほどではないにしろ権利先進国のアメリカにしてこの惨状。大学の教授になった後本作の主な時代となる1970年でも女性の権利は、現在の日本に比べても雲泥の差、お話にならない。

彼女は、独身男性あることを理由に介護費用を税控除できない男性の存在を知り、代理人として、夫君と共に控訴裁判所(日本の高等裁判所に相当)への訴訟に踏み切る。長い歴史を重ねて来た判例集をひっくり返すという全く勝ち目のない無謀な勝負である。
 彼女の弁論が三人の判事に強く訴えるものがあったと同時に、僕の眼には国側担当者の弁論が彼らに反感を覚えさせたように見える。この二つが合わさって、夫婦は勝利を勝ち取ったのではないか。

この勝利があり(史実的にはこれが彼女が代理人になった最初の裁判ではなく、母親の介護でもないが)、またルースが先導する形で、男女差別のあったアメリカの法律が次々と改正され、現在の法律上の平等がほぼ成立した現状に至るのである。
 イスラム教や一時のキリスト教は女性に対して不合理な差別をしてきた。その考えに賛同する人々は“女性を守る為”と言うのだが、おためごかしであるのは火を見るよりも明らか。僕は、千年前に一番の科学力を誇ったイスラム教圏と後進的なキリスト教圏の、現在における発展の違いは、多く(性差を慮った上での)男女平等がもたらしたものと思っている。そりゃそうでしょ。科学的に知能指数を計っても殆ど差がない女性を学問から排除することは知恵の総和を半減させるのだから。フェミニストの言論には時に理解しがたいものもあるが。

個人的には前半が面白い。後半のほうがお話としてはスリリングであるが、進展するに連れ変化が少なく手詰まりの印象が強くなる。アメリカには優れた法廷映画が多いし、昨今目立つ新聞社を描いた作品群や女性が奮闘する作品群に見せ方に似ている為、後発の本作は不利ということである。駆け引き度が強い、アメリカの裁判の仕組みを知っていた方が面白く観られますかな。

法律に基づき男性が被る不利益を男女平等に結びつけたのが賢い。

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