映画評「アウトブレイク」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1995年アメリカ映画 監督ヴォルフガング・ペーターゼン
ネタバレあり

“ブルーレイ消滅危惧作品”シリーズその4。その中では比較的重要度は低いが、現在新型コロナウィルスで騒動になっているので、病原菌パニック映画の中では一番面白いと思われる本作を丁度四半世紀ぶりに観てみる。
 そもそもさほど作られるタイプではなく、僕の知る一番古い作品はイーリア・カザン監督「暗黒の恐怖」(1950年)で、新しいものに「コンテイジョン」(2011年)というのがある。邦画ではお粗末至極の「感染列島」(2009年)があるが、あのデタラメぶりの記憶があるので、本作が傑作に見える。

1980年代にアフリカでエボラ出血熱に似た感染症が起きる。アメリカ軍が村を爆破して消滅させ、それと共に病原菌を細菌兵器に変えようとする目論見を持つ(というこが映画の進行と共に判明する)。
 およそ十年後同じ病気がアフリカで再び発生する。あるアメリカ人がこの病気の宿主であるサルを人口2600人の町のペットショップで密売しようとして失敗、途中の森で放してしまう。この売り主はサルの吐いた水を浴び、ペット店長は引っかかられて感染、この二人から次々と感染する人が出て来る。
 当初と違い、やがて空気感染する患者も現れ、米軍で感染症を担当している大佐ダスティン・ホフマンが上官モーガン・フリーマンと対立しつつ、ワクチン製作の為に、部下キューバ・グッディング・ジュニアと共に宿主探しに奔走する。他方、細菌兵器開発に邁進する将軍ドナルド・サザーランドは自分の悪行を暴かれないようにホフマンを逮捕若しくは殺害しようと自ら乗り出すと共に、感染症が蔓延した町を特殊な爆弾で消失させようとする。

米軍上層部の陰謀を絡めたことで風呂敷を広げ過ぎた感がなくもないのだが、結果的に時限サスペンスとして上手く機能することになった。病気の変遷と宿主を探すまでのミステリー的な展開がスリリングで楽しめる。

全体の構成と人物配置は型通りながら、前述通り、人々の行動が全く常識外れで興醒めさせられる「感染列島」を見た後では、非常にきっちり作られていると感じられるのである。
 ホフマンとCDC(アメリカ疾病予防管理センター)に勤務する元妻レネ・ルッソとの関係がなかなか洒落ている。ホフマンがやり直しをレネに持ちかけると彼女が“免疫もあるしね”と答える幕切れなど脚本家が腕を揮っているところが多い。サスペンスとして見ると序盤の内その描写がまだるっこく感じられるし、純度も下げているが、ホフマンの微妙な表情など意外に楽しめる。「感染列島」では男女が病気以外の話をしていると緊張感を阻害する感があったのに対し、本作ではほぼない。脚本の出来の違いである。

今回のコロナウィルスの件では、初動の遅れ(感染を記した記事を削除、発言者をデマを広めたと摘発、など)がここまで広がった原因である。全体主義国家の悪いところが出た形だが、その後の武漢市封鎖では、良いことと断言できないまでもその強みが出たと感じる。

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