映画評「レイチェル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年イギリス=アメリカ合作映画 監督ロジャー・ミッチェル
ネタバレあり

40年くらい前にTVで観た日本劇場未公開映画「謎の佳人レイチェル」(1952年)のリメイクと確信して(“知って”ではない)観ることにした。こちらも未公開でしたよ。原作はダフネ・デュ・モーリアのゴシック小説で、代表作「レベッカ」と似たムードである。

英国少年フィリップは、年の離れた従兄に育てられるが、従兄は一人療養の為に独りイタリアへ旅立った為、少年は教父に育てられ、やがて成長する(サム・クラフリン)。
 成人したフィリップは、やがて従兄から“妻レイチェルに殺される”と読める手紙を幾つか貰った後実際に亡くなった為にイタリアへ向かい、自分が遺産相続人であることを確認する。相続する英国の屋敷にやって来たレイチェル(レイチェル・ワイズ)を見た彼は悪女にちがいないという偏見をすぐに捨て、やがて恋に落ちると、自分が正式に遺産相続するや否や、再婚した時は無効になるという条件を付けて彼女に遺産を譲渡する書類を作成する。
 僕は彼としては彼女と結婚すれば元に戻ると計算をしていたのだと想像するが、結婚を拒否された後何故か重態に陥った為に強い疑心暗鬼に襲われる。そこで、乗馬中に崩れやすい崖から滑落しそうになったことのある彼は、レイチェルに崖での乗馬を勧める。ところが、その直後に彼の疑惑は全て間違っていたことが解るも後の祭り、彼女は滑落して死んでしまう。

という物語で、彼女が従兄を殺したか否かは解らないのだが、フィリップに関しては全て無実であったらしいので、様子がそっくりである従兄が彼と同じ勘違いをした可能性が高い。しかし、このお話の面白味はそれがはっきりしない点にこそあるので、決めつけてしまうのは無粋と思う。

監督は僕が高く評価しているロジャー・ミッチェル(日本ではミッシェルと表記されている。フランス人ではないので僕はミチェル、若しくはミッチェルと発音すると思うが確信はない)だが、19世紀半ばのムード醸成、風雲急を告げる終盤の展開ぶりを別にすると彼としては物足りない。

小説の世評は「レベッカ」に優るとも劣らないように見受けられるが、映画版に関してはじっくりと布石を積み重ねる部分が断然上手いアルフレッド・ヒッチコックの「レベッカ」(1940年)に比べ、「謎の佳人レイチェル」も本作も、そこが大分見劣りする為に全体としての印象が弱い。ムードが良いだけに惜しまれる。

レイチェルが交際しているとフィリップが考えたイタリア人が同性愛者でその為に彼の疑惑の一つが消えるわけだが、ヘイズ・コード(アメリカの映倫)が同性愛という言葉すら禁じていた時代の旧作はどう処理していたろうか。

レイチェルを演ずるのがレイチェル・ワイズというのが面白い。

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