映画評「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1989年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

丁度一週間前に「レイダース 失われた聖櫃《アーク》」を久しぶりに再鑑賞したが、折角なのでシリーズ連投とすることにした。シリーズ二作目「魔宮の伝説」は5年前に書いているので、飛ばして第三作と行きます。1989年の鑑賞記録を紐解いてみたら、何故か東京でもかなり南のキネカ大森で観ている。

さて、開巻直後は少年時代のインディの一幕で、リヴァ-・フェニックス扮する少年インディアナ・ジョーンズがユタ州の洞窟でコルテスの十字架を巡って盗掘団一味と争奪戦を演ずる。サーカス列車に飛び乗って、マジックや蛇やらライオンやらの猛獣絡みで、手に汗握らせる。ついでにインディの蛇嫌いや愛用する帽子の由来が明らかになるなど、まずはゴキゲンな序章である。

時代は戦争の暗雲立ち込める1938年に移り、女子学生に大人気の考古学教授になっていたインディ(ハリスン・フォード)が悪党一味から十字架を取り替えした後、キリスト伝説にまつわる聖杯を追ううち行方不明になった父親(ショーン・コネリー)を救出すべく、事前に送られてきた手帳を手掛かりに先ずベニスへ赴き、教会を作り替えた由緒ある図書館で謎を解き、モーターボートでのピンチを潜り抜けると、独墺国境の城に軟禁されていた父と再会を果たし、悪女の正体を現した同業の美人エルザ(アリスン・ドゥーディ)に奪われた手帳を取り戻しに父子でベルリンに潜入、飛行船と小型飛行機での脱出行、と息をつく間もなく展開する。砂漠での見せ場の後、遂に関係者が一堂に会する神殿でのクライマックスとなり、ここでも三つの謎が断然興味に駆り立てる。

幕が下りると(今回はTVですがね)、ご馳走様でしたとニコニコになる快作。

展開の早さとジェットコースターぶりでは第二作が圧倒的であるが、クラシックなお楽しみでは第一作とこの第三作に譲る。特にこの第三作は徹底したクラシック趣味に横溢、僕などは昔の飛行機を観るだけで興奮させられてしまう。地図により主人公の移動を示すのは戦前の映画でよく観られた表現で、フランソワ・トリュフォーも「暗くなるまでこの恋を」(1969年)で再現していたのを思い出す。こういうのが老骨にはたまらんのです。しかも、父子の関係の変遷を見せることで大いに緩急とドラマ的興趣が加えられているので、星の数では第二作より★一つ分少ないこの第三作が一番好きかもしれない。

1989年製作だから第一作の時と違って完全にCG時代に入っていたものの、本作ではまだまだSFXが大活躍で、前述の飛行機や爆破シーンなど大いに楽しめる。何と血沸き肉躍ることか。いくら一見迫力があっても(僕は全くそう思わないのだが)CGの大袈裟な表現では、実際に火をふく爆破の魅力に到底及ばない。やはり映画の画面は実際にカメラを通さないとつまらないとご老体は思うのでござるよ。

第一作と第三作はナチスが悪役である。スティーヴン・スピルバーグはユダヤ系アメリカ人で、後に「ミュンヘン」というイスラエルを絡め、9・11以降の彼の心境を反映したと思われる実に興味深い作品を発表する。翻ってこのシリーズでナチスが悪役なのは展開を解りやすくする格好の素材だったに過ぎないのだろうが、今観ると当時スピルバーグがどういうスタンスで取り組んでいたか興味惹かれるものがある。9・11で“聖戦”のイメージも大分変った。

このシリーズは難しいことは考えずにひたすら楽しむのが良いのでしょうけどね。

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