映画評「アルゴ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ベン・アフレック
ネタバレあり

【事実は小説より奇なり】を地で行く実話サスペンスで、僕も多少記憶しているイランにおけるアメリカ大使館人質事件に取材している。この時始まったイランとアメリカの不仲がイランの政権交代で解消されそうな気配がある。この映画が公開された昨年には全く考えられなかったわけだから、世の中解らないものである。

ホメイニ師が国のトップに祀り上げられた1979年、国外に逃れていた国王を手術の名目で庇護するアメリカに対しイランが激怒、アメリカ大使館が占拠され、6人の男女大使館員がこっそりカナダ大使の私邸に逃げ込む。イランが逃げた6人を処刑するのが目に見えているので、その事実が明らかになる前に国外へ脱出させたいとアメリカ当局は考える。が、アメリカ人であるというだけで処刑されかねない趨勢の中、名案が思い浮かばない。
 その時CIAの脱出屋ベン・アフレックが「最後の猿の惑星」を観ていて偽装映画クルー作戦を思い付き、説得工作の結果、採択される。彼は知己の映画人を採用して作戦開始。何箇所もあるチェックを乗り越えなければ命を失うことになる為、念入りに映画人としての振舞いを6人に指導するが、いよいよ実行という直前になって上層部からの中止司令が下る。その結果、それを無視して断行したアフレック一行は次々とピンチを迎えることになる。

久々にアメリカ映画の良い部分が多く出た作品と思う。近年、何かとリアリズムを偏重した映画的に面白味の薄い作品や、逆にこてこてのVFX映画ばかりでげんなりする中、こういう多少嘘っぽい部分のある中間的な娯楽作品こそ古くからの映画ファンには御馳走と言うべし。☆★はその為実力以上に多くした。

全体がタイムリミット・サスペンスなのであるが、特に、空港のチェックを突破するという長い(シークエンスにおける)時限サスペンスは、些か作り物めいているとは言えオーソドックスに進められ、超ド級とまでは行かないながらなかなか強力。昨今本格的時限サスペンスは少ないからそれだけでも嬉しかったりする。「ゴーン・ベイビー・ゴーン」で監督として優秀な感覚を持っていることを世に示したアフレックの監督作品としては、完成度はともかく、一番大衆に受ける作り方が為されている。

CIAを悪者にしていない映画も久しぶりでござる。

「アルゴ探検隊の大冒険」(1963年)のリメイクかと思いました。

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