映画評「人生はビギナーズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督マイク・ミルズ
ネタバレあり

前作「サムサッカー」の記憶も大分怪しくなったマイク・ミルズの長編ドラマ第2作。

父親クリストファー・プラマーを病死で失ったばかりで喪失感に苦しむグラフィック・デザイナー、ユワン・マクレガーが、仮装パーティーで知り合ったフランス出身の女優メラニー・ローランと意気投合、同じように父親に対して距離を置いてきた二人は同病相憐れむ心境ですぐに恋に落ちるが、彼が異性と付き合う度に別れへの恐れを抱くことが自ら別れる原因を作ってしまう変な性格である為に同居生活もすぐにジ・エンド。しかし、彼女が勇気を奮って彼の許に舞い戻って来た為、彼は人生の新たな一歩を踏み出す。

と書いて来るとただの恋愛映画であるが、この二人の恋の行方を左右する触媒として、母親が死んだ後75歳でゲイであることを告白した父親の存在がある。
 映画は現在の彼の生活を描写する間に、ゲイであることをカミングアウトした後闘病生活に入った父親が余生をエンジョイする様子をかなりの割合で織り込んでいき、さらに美術館管理に没頭する父親に冷淡に扱われていたように思われる母親と過した少年時代の彼の様子がフラッシュバックとして挿入される。
 母親が死んだ後彼は父親を甲斐甲斐しく世話しながらもその時代に作られた心の距離感は恐らく縮まっていない。僕には、だからこそ彼の喪失感は逆に大きかったと想像されるのだが、彼の恋を励まし促進させるのは間違いなく晩年の父親の勇気あるカミングアウトとその後父親が示す幸福そうな姿なのである。

内向的で臆病な彼がそこまで具体的な一歩を示すことはないが、彼女を抵抗なく受け入れられる幕切れに説得力を持たせるのは父親の描写があるからに他ならない。

内向的なマクレガーが案外面白いが、クリストファー・“エーデルワイス”・プラマーがさすがの貫録。わんちゃんも大活躍でしたね。

僕は犬が出て来ても点が甘くなることはないと思いますが・・・(笑)

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