映画評「月に囚われた男」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年イギリス映画 監督ダンカン・ジョーンズ
ネタバレあり

ハリウッドが繰り出すCGに飾り立てられた華美なSFにはうんざりさせられることが多いが、デーヴィッド・ボウイの息子というダンカン・ジョーンズが作ったこの英国作品は事情が大分違う。

エネルギー問題に終止符を打つヘリウム3なる物質が発見された未来、統括するルナ産業から一人の男サム・ロックウェルが3年間の契約で一人それを採掘する為に月の裏側に派遣されている。相手をするのはガーティと呼ばれるコンピューターだけで、地球で待っている妻(ドミニク・マケリゴット)との通信も衛星事故で途絶えている。
 ある時採掘中に事故を起こした彼は目覚めて暫くして自分と同じ姿の人間を発見、幻影かと思うが遂にはそれが生身の人間であると気付く。その様子から相手はクローンであると判断するが、相手はこちらがクローンであると主張する。二人は最初は衝突するものの、やがて協力し合って謎を解明、クローンたる自分たちがいずれ殺される運命にあると気付き、それを避ける為に一計を案ずる。

といったお話で、クローンが元の人間を殺した挙句にハイタッチで終わるという人間たる観客を馬鹿にした「アイランド」と違って真面目にクローン人間の悲哀に言及している。
 前半はやや退屈ながら無機質な寂寥感が秀逸で、中盤はミステリアスな面白さがある。ネタを明かされて陰謀との対決ムードになる終盤はちょっと落ちるが、地味ながら本格SFの味わいに暫し酔わされる。

また、CGの代わりにミニチュアなどの特撮で処理した場面が多いというだけでなく、全体のムードがSF映画が市民権を得た1960年代後半から70年代のハードSF映画を思い出させる。即ち、「2001年宇宙の旅」「サイレント・ランニング」やTVの「謎の円盤UFO」といった辺りである。但し、小学6年生の時に見ていた最後の作品についてはかなり記憶が飛んでいるので受け売りであります。

CGを大量に使わないとこう映画らしくなるものか。有難いです。

邦題はボウイが主演したSF映画「地球に落ちて来た男」を意識したわけね。

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