映画評「幸せはシャンソニア劇場から」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2008年フランス=ドイツ=チェコ映画 監督クリストフ・パラティエ
ネタバレあり

ヌーヴェルヴァーグ以前のフランス映画がお好きな方には文句なくお薦めできるフランス映画の秀作である。

舞台背景もフランス映画全盛期の1936年パリ、庶民的なミュージック・ホール、シャンソニア劇場が折からの不況で悪徳不動産業者ベルナール=ピエール・ドナデューに取り上げられ、支配人が自殺する。
 かくして本作の主人公であるジェラール・ジュニューは裏方の仕事を失い失業して酔いどれになり、その前に彼を捨てて再婚していた妻に一人息子マクサンス・ペランを引き取られてしまう。が、仲間のガド・メラッドが物真似を披露したことから劇場再建の機運が出来、ジュニューらは折しも柔和路線を打ち出したドナデューと交渉に成功、しかも母親のいた劇場を頼って有望な歌手志望美人ノラ・アルネゼデールが上京してきた為に益々彼らの方に風が吹いてくる。
 しかし、彼女が更なる成功を求めて大手に移ると客も減って再び破産状態に。二十年も家にこもっていたラジオ男実は劇団の作曲家であったピエール・リシャールがその声を聞いて彼をひきこもりにした女性の娘であると確信して思い切って家を出、連れ戻して来る。彼の作ったレビューはノラの活躍もあって大成功するものの、ノラが劇団の若者クロヴィス・コルニアックに靡いたことに腹を立てたドナデューが動き出したことから悲劇の幕が切って落とされる。

子供と劇場が絡むお話ということで、本作を製作したジャック・ペランがかつて出演した「ニュー・シネマ・パラダイス」と似ているという感想は納得できる。しかし、僕にはそれ以上に、入り組んだ構想はマルセル・カルネの「天井桟敷の人々」、仲間が力を合せて起業するのはジュリアン・デュヴィヴィエの「我等の仲間」、ほのぼのとしたタッチはルネ・クレールの「巴里祭」「巴里の屋根の下」といった具合に、1930年代フランス映画の宝石とでも言うべき作品群を合せたような印象を覚え、嬉しくて言葉にならない。

もっとちゃんと書けと言われそうだが、パリ下町情緒の馥郁たる醸成、下町人情の鮮やかな点出という言葉で十分なような気がする。まして、舞台を観ているような錯覚に陥る最後の演目におけるヴォードヴィリアン的楽しさについては言わずもがな。

クリストフ・パラティエの作品としては前作「コーラス」に及ばないという若い人の意見が目立つものの、古いフランス映画的な豊穣さという意味では本作が圧倒する。

昔の名盤三枚組が一枚の値段で買えたような気分です!

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