映画評「サンシャイン・クリーニング」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督クリスティン・ジェフズ
ネタバレあり

タイトルと言いドラマ設定と言いアラン・アーキンの出演と言い「リトル・ミス・サンシャイン」に似ているドラマだなあと思ったら、同作品の製作者グループが絡む作品であった。

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ヒロインのエイミー・アダムズは高校時代には人気チアリーダーだったのも今は昔、現在は三十代で掃除婦をして食いつなぐだけの冴えないシングルマザー。問題児である小学生の息子だけでなく、変な事業に凝る老父アーキン、仕事が長続きしない妹エミリー・ブラントを抱えて右往左往するある日、高校時代の恋人で不倫相手の刑事スティーヴ・ザーンに血みどろの事件現場を掃除をする仕事を紹介して貰い、幾つかこなした後妹を助手に本格的に起業する。
 仕事に軌道に乗った頃、エイミーが出産前祝い同窓会(ベイビー・シャワー)に出ている最中にエミリーが出火してしまい今までの努力が水泡に帰してしまうが、また掃除婦に戻ろうと決心したその時ダメ親父が素晴らしいプレゼントをもたらす。

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現場清掃が本格的に扱われた「ザ・クリーナー 消された殺人」を先に観た人は多少損をしている感を覚えると同時に、逆に現場清掃がそれほど詳細に描写されていない点について不満を覚えずに済むかもしれない。

それはともかく、僕はこの映画が大変気に入った。ユーモアとペーソスを交えながら進行する点で「リトル・ミス・サンシャイン」によく似ているが、登場する人間が尽く奇妙すぎるあの作品よりは我々に近い負け組の人々の生活が、非常に実感を伴いつつ、さらりと描かれているからである。

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本作の主旨は関係や絆を再確認する家族の姿を描くことであって、家族の関係が劇的に変化する様子を描くことではない。この映画から受ける実感は、まずそこから生まれる。しかし、それをドキュメンタリーのように写実的に扱っても面白くないので、現場清掃という非日常的な要素を持ち込んで若干の戯画化を試みている。僕にはその匙加減が絶妙に感じられ、爽やかな後味をもって見終えることができた。
 現場清掃を自らの傷をぬぐい去るメタファーとしてもっと活用するアイデアもあっただろうし、展開が楽観的過ぎると思えてしまう人には受けは良くないだろうが、詰め込まれたネガティヴな要素が陰々滅々に扱われたら観ているこちらはたまったものじゃあない。完成度よりは後味の映画と言うべし。

エイミー・アダムズが「ダウト~あるカトリック学校で~」に続いて好演。エミリー・ブラントも素晴らしい。

苦い味を綺麗にぬぐい去っていますな。

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