映画評「太陽のない街」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1954年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

徳永直(すなお)の同名小説は未だに読んでいないが、読書好きなら一度は読んでおくべきプロレタリア文学の代表作。社会主義のプロパガンダ的作品を多くものしている山本薩夫が選ぶべくして選んだ作品と言って良いだろう。

1926年、東京下町にある大同印刷で38名の労働者が解雇され、それに抗議する為に無関係の3000名もの労働者が争議に入っていくが、会社側は代用職員をこっそり雇用して対抗、ソ連のような国家転覆を恐れる官憲は資本家や財閥のバックアップを得て取締りを強化していく。

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構成上の主人公は、争議メンバーの子を孕んだ妹・加代(林通子)や昔気質で争議を苦々しく思う病床の父親を世話する婦人労働者の高枝(日高澄子)で、彼女の目を通して妹が警察のリンチで死亡、少女が身売りされ、親しくする争議委員が暴力団に襲撃されるといった事件が描かれる。

どちらかと言えば下層階級の描写が集中しがちなプロレタリア文学をベースにした作品としては資産家・財閥・官憲といった人々を交えて多面的・立体的に構成している点、自然主義的に事実のみを積み重ね余り啓蒙的になっていない製作態度は認めたい。
 また、最近の作品ではなかなか考えられないが、大同印刷、講談社といった現在も存続している会社が実名で出てくるのも凄味がある。色々制約のあるNHKはこの作品を放映できないだろう。

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但し、どぶ川を中心にした舞台となる町の環境描写が不足気味で「なるほど“太陽のない街”だな」と感じ入る程陰鬱で閉塞的なムードが醸成しきれていず、映画的な潤いという点で些か物足りない。さらに、どうでも良いことかもしれないが、人の手を借りないと立てないような重病人の父親がどうして自ら縊死できたか疑問。

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