映画評「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・三池崇史
ネタバレあり

檀の浦の戦いから数百年後、平家の落人が作った寒村で埋蔵金を巡って清盛(佐藤浩市)一派<赤組>と義経(伊勢谷友介)一派<白組>の間で激しい抗争が起き、そこへさすらいのガンマン(伊藤英明)が割り込んでくる。

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というおふざけの一編で、「平家物語」をベースにマカロニ・ウェスタン的な物語が展開するわけだが、古今東西の文化が入り混じり、しかも全編英語なので、真面目な人ならそれこそ劇中出てくる日本語台詞「何じゃこりゃ(What the hell?)」といった気分になることは間違いない。西部開拓時代のいでたちだったり、現在の不良っぽい格好もどきであったり、日本が舞台なのにお墓が十字架だったり、やりたい放題。その中でパロディーとオマージュが溢れんばかりに出てくる。

パロディーの幹はフランコ・ネロが主演した「続・荒野の用心棒」原題Djangoで、棺桶の中からマシンガン(ガトリング銃)が出てくるのもそのまま、最後に北島三郎が歌うのも懐かしい主題歌の日本語版。従って、実際には「ジャンゴ」をベースに日本史・世界史の要素を入れたと言ったほうが近いのでござる。

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源平の諍いに対して【ばら戦争】の喩えが出てくるかと思えば、「イチロー、松井」という時事ネタもあり、紅組と白組の間を右往左往する保安官(香川照之)は「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムの如し。因みに、清盛が拘る「ヘンリー(6世)」は【ばら戦争】の中心人物だ。

日活無国籍アクションへのオマージュの香りを感じていると、桃井かおり扮する<ばばぁ>の名前がルリ子で、敵側の娘(木村佳乃)と結ばれた息子(小栗旬)の名前はアキラと判明。つまり浅丘ルリ子と小林旭のことと思って良さそうだが、その一方で<アキラ>にはアメリカでも有名な日本のアニメ映画「アキラ」から取られていることが、彼の父親でもある彼女の師匠クェンティン・タランティーノの「実はアニメおたくなんでね」という台詞から判り、ルリ子をめぐるシークェンスにおいて「キル・ビル」のパロディーまでやってのけている。そして、二人の孫は後に「イタリアに渡ってジャンゴと呼ばれた」という落ちがついて終わり。

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といった具合にお遊び即ち小ネタは無尽蔵と言っても良いくらいだが、残念ながら肝心の幹となるお話が2時間の上映時間に耐えるほど面白くない。というより、枝葉を色々と盛り込むうちに2時間を超える長尺になってしまったのである。この手の作品は1時間半くらいで見せてもらえると実に有難いのだが。

頑張ってはいるものの下手な英語の洪水の中でタランティーノの英語は助け舟のようだった(笑)。

大陸へ渡ってジンギス・カンになったという説をもじって、源義経をジャンゴにしたほうが面白かったに。

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