映画評「あらくれ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1957年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

高校時代に読んだことのある徳田秋声の名作「あらくれ」を成瀬巳喜男が映像化したドラマ。幸か不幸か二ヶ月前に読み直したばかりなので、単純そうで結構複雑な話をすんなり理解することができた。

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大正初めの東京、缶詰商人(上原謙)に嫁いだお島(高峰秀子)は浮気っぽい夫に、前夫の子を孕んだのではないかと疑われ、喧嘩による流産の末に離婚。
 彼女は植木商売を始めた兄についていった東北で旅館の若旦那(森雅之)と懇ろな仲になるが、酌婦のような生活をしているのではないかと訝る実父(東野英治郎)に連れ戻され、今度は洋服職人の男(加東大介)と内縁の夫婦になって洋服屋を始め、それがうまく行かぬと思うや新しい型の知識のある使用人(仲代達矢)と新生活を画策する。

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戦後日本の女性は強くなったと言われるが、様々な文学や映画に触れると「必ずしもそんなことはないのでは?」という気にさせられる。大した権利こそなかったものの、封建時代の日本の、特に都会の女性は芯があって意外と強かったらしい。
 勿論、本作のヒロインお島の気性の激しさと本能のままに突き進む動物的生命力は例外であろうし、そこに激しく流転する女性を描きながらもありがちなメロドラマに落ちていない理由がある。

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ただ、原作に比べると説明不足で解りにくいことは否めない。
 脚本家・水木洋子がお島が養家に引き取られる前段を端折っているからで、缶詰商人に嫁ぐ前に養家に縁のある頭の鈍い男との間に為された有名無実の結婚のせいで旦那が子種を疑って離婚することになる経緯を原作を読んでいない人はまず理解できないだろうし、実家と養家に関する彼女の思いは基本的に描かれていない。
 結果、ダイジェスト的でごくあっさりとした感じになってしまっているので物足りないが、エピソードの取捨選択は上手く、ヒロインの心理はよく解らないものの性格と行動力は不足なく描かれている。この原作を収めるには些か短い2時間の上映時間という制約の中ではしっかり作っていると思う。

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