映画評「ゴールデン・ボーイ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1939年アメリカ映画 監督ルーベン・マムーリアン
ネタバレあり

僕が新米の映画ファンだった時代、【スクリーン】誌で、毎月オールド・スターのフィルモグラフィーが画像付きで紹介されていた。ゲイリー・クーパー、マリリン・モンロー、ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル、ジェラール・フィリップなど既に故人となっていた人が多かったが、ウィリアム・ホールデンは健在だった。
 そのフィルモグラフィーの最初にあったのがこの「ゴールデン・ボーイ」(初の主演作)だが、今日まで観るチャンスがなかった。WOWOWは勿論NHKも情ない状態の中、アマゾン・プライムが結構貴重な古い映画を扱っていて、有難い。

米国。イタリア系の店主リー・J・コッブは息子ウィリアム・ホールデンを一流のバイオリニストにしようと、大金をはたいて高級なバイオリンを買う。息子はボクシング・マネジャーのアドルフ・マンジューに自ら売り込んで、負傷したボクサーの代わりに試合に出場、勝利して賞金を稼いで父親に見せる。
 父親はバイオリンの件を言い出せず、複雑な心境に苛まれる。息子自身も実際にはバイオリニストとボクサーの間で揺れ動くことになるのだが、ボクサーに賭けてみることにする。
 実力がある為ギャングのジョゼフ・キャレイアも絡んで来て引き返せなくなるが、マンジューのアシスタントで愛人のバーバラ・スタンウィックは、ボクサーにすべく色気を使ううちにいつか愛するようになったこの若者と父親の関係を理解し、やがてバイオリニストに戻るよう説得する。
 ホールデンは彼女のマンジューとの仲への嫉妬もあって、それに反発してキャレイアの下で試合をする。チャンピオンになる前の前哨戦で勝利するが、相手の黒人ボクサーが死ぬ。人を殺した罪悪感に苛まれた彼は、マンジューと切れたバーバラと父親のもとへ向かう。

後年の「チャンピオン」(1949年)や「ロッキー」(1976年)などとは切り口の違うボクシングもので、ボクサーとバイオリニストという対照的な道のどちらを選ぶかという内容がなかなか新鮮。
 ホールデンが自分の為に散財して困っている父親を助ける為に当初ボクシングをやったのだとしたら、息子の為に高級バイオリンを買った父親との間で、まるでオー・ヘンリーの好短編「賢者の贈り物」における夫婦のような関係が成り立つわけで、切ないものがある。

人情劇としてその辺りをもっとはっきりさせた方が良かったかもしれないが、イタリア系らしい親子の愛憎関係はよく表現されている。配役の関係で余りイタリア系に見えないのは難点。

まだまだ線が細く、戦後の彼とは別人のように見えるホールデンは、服を脱ぐと既に結構良い体格をしている。
 本格的な格闘シーンは終盤になって漸く現れるが、この格闘シーンがロングもアップも使わず、ほぼフルショットからバストショットで撮っていてなかなか迫力がある。ロングではないから顔が判別できる程度に戦っているわけで、ホールデンが実際に闘っているように見える。もしそうなら実に健闘している(拳闘だけに)。

1974年にジュリアーノ・ジェンマ主演の映画が「ゴールデン・ボーイ/危機また危機」の邦題で公開された時、2年前に初めて知ったばかりの本作題名を一人前の映画ファンのようにしたり顔で思い浮かべていた。

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