映画評「四畳半襖の裏張り しのび肌」

☆☆(4点/10点満点中)
1974年日本映画 監督・神代辰巳
ネタバレあり

永井荷風作であるという説が益々濃厚である春本「四畳半襖の下張」を映画化した「四畳半襖の裏張り」とは直接関係ないので、続編というよりはシリーズ第2弾と言うべし。監督は引き続いて神代辰巳。

芸者・花清(宮下順子)が、旦那を争って妊娠した為に先に引かせられたライバル芸者・染八(絵沢萌子)の産んだ赤ん坊・正太郎を盗んだところへ関東大震災が起こる(1923年)。
 16年後、結局そのまま正太郎を育てた花清は置屋の女将として奮闘しているが、商売を続ける上で問題が多い16歳の正太郎(中澤洋)を昼間、旦那が経営する映画館の映写技師島村(花上晃)とその妻美也子(丘奈保美)に預ける。
 しかし、正太郎は “恐るべき子供” の力を発揮、芸者小ふく(芹明香)に続いて美也子を妊娠させ、養母・花清にまで手を出す。やがて満州で太鼓持ちになることを決意した正太郎を、妊娠した女たちが見送る。

芸者置屋を舞台にしているせいもあり、昨日の「白い指の戯れ」と違って、性愛場面の連続である。従って、本能的に興奮しようと思って観るのでなければ退屈させられる。尤も、正太郎の妙な風情を見るだけで萎えるのは必定なので、その目的でも役に立たないであろう。

しかし、深読みと言うか、脚本を書いた中島丈博と神代監督が恐らく狙ったものを想像すると、なかなか興味深い作品と言えないこともない。
 少年が預けられる映画館でやっているのが「土と兵隊」(1939年)で、これがヒントとなる。太平洋戦争前とは雖も日中戦争で人が求められ、兵隊ではないにしても正太郎は太鼓持ちになるべく満州へ行き、それを見送る女性たちは妊娠している。
 つまり、 “産めよ増やせよ” の時代への皮肉を込めた映画なのではないかと僕は理解するのである。反戦映画とは言わないまでも、極めて反体制的な作品なのであろうと思う次第。

少年の披露する下卑た芸も風俗的に興味深い。

「土と兵隊」はプライム・ビデオで見られる。田坂具隆監督の作品なので、本作の中で見られる場面を見るだけでも、先日再鑑賞した「五人の斥候兵」(1938年)と似た香りが漂う。

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