映画評「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督ジョー・タルボット
ネタバレあり

仲の良い黒人二人を主人公にしながら、最近アメリカ映画に溢れている直球の社会派映画になっていないところが良い。この間観た邦画「」に似て、大雑把に言えば “故郷は良い” という内容で、主人公を演じるジミー・フェイルズの自伝的作品ということである。ジョー・タルボットの長編第一作。

サンフランシスコ。ジミー(本人)と作家志望?であるその友人モント(ジョナサン・メジャーズ)は、ジミーがかつて家族と住んでいた、現在では富裕層が暮らすフィルモア地区にある以前の自宅をよく訪れる。
 二人はそこに住んでいた白人夫婦が引っ越した為不法占拠し始めるが、不動産屋が売りに出した為に色々と粘った末に最終的に出ていく羽目になる。
 しかし、ジミーにとってそれ以上と言える問題は、その家が祖父が戦後に作ったという嘘を事実として認められない彼の現実である。それでもモントがもたらした登記簿に記された事実に、やがて現実を受け入れる。

「糸」の主人公たちは家や家庭の代りに自分達の故郷を愛してやまなかったが、本作の主人公がとりわけ愛するのはかつて住んでいた家である。しかるに、その家への愛情は結局故郷サンフランシスコへの愛に昇華する。

物語の展開は素人っぽく舌足らずで要領を得ないところが多く、人物関係も解りにくいところがあるが、家と故郷への愛というテーマが、見事な画面により、鮮やかに成立していると思う。独特なリズムの見せ方を僕は映画的に買う。

お馴染みの坂は余り出て来ないが、「めまい」(1958年)以来の素晴らしいサンフランシスコの叙景と言いたい。

タイトルからラップが大量にかかる映画を想像していたが、基本は静かなクラシック風のインストルメンタルで、既成曲もラップ以外のジャンル、例えば、少年時代に流行った懐かしい「花のサンフランシスコ」San Fransicso(但し歌唱はスコット・マッケンジーではない)やジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」Somebody to Love。どちらも1967~68年のウエストコースト・サウンドで、ヒッピー絡みと言って良い。後者はラップのサンプリングに似た大幅なリミックス。本作で一番ラップに近いかもしれない。

「あなただけを」と言えば、あおい輝彦に同名のヒット曲があり、サザン・オールスターズにもある。Somebody to Love と言えば、 Queen に同名の曲がある。僕ら以上の世代であればジェファーソン・エアプレインだが、若い人は当然こちらを思い浮かべるであろう。

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