映画評「カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年アメリカ=マレーシヤ=ポルトガル合作映画 監督リチャード・スタンリー
ネタバレあり

高校時代に幻想文学の作家H・P・ラブクラフトを知ったが、結局未だに読んでいない。ロアルド・ダール、フリオ・コルタサル、スティーヴン・キングなどと並んで文学好きの映画ファンなら読みそうな作家で、先日も拙ブログのコメント欄で名前が出た記憶がある。

キングの「ペット・セメタリー(原作はセマタリー)」に似て森の深奥に邸を構えるニコラス・ケイジの一家がある時、紫色の閃光と共に隕石らしき物体に襲われる。偶々森を調査に訪れた若い水文学者エリオット・ナイトは隕石と断定、水質分析でも異常が出たので飲まないように警告する。
 一番年下の次男は井戸に関心を持ち、その水に影響を受けたらしい紫色のカマキリに遭遇、やがて父親が大事にしていたアルパカが異様な見た目になり、その直後母親ジョエリー・リチャードスンと次男が強い放射線?を浴びて体が互いに癒着、物凄い食欲の末に第二子の長女マデリーン・アーサーを食べようとする。長男ブレンダン・マイヤーは井戸(の異物)に飲み込まれ、何者かに向けて銃を構えたケイジは保安官に銃撃されて死ぬ。
 その死を見届けたナイト青年は奇妙な隣人を訪れて死んでいるのを確認。そこから戻るや、ケイジが何故か蘇生して活動しているのを発見するが、その直後に家は崩れて辛くも生還する。

一種のSFホラーであるが、そう理詰めではなく、何が何だか解らないようなところに幻想作品として解釈したくなるところが多い。結果的にコルタサルに通ずる、形而上的な実存主義文学の香りも漂う。

従って、左脳的に論理的に考えると、無駄と思える要素も多い。その筆頭が神秘主義映画とのミスリードをするかのようなマデリーンの呪術の儀式で、その他にキングの作品に出て来るような次男の見えない友達との会話、母親がボーっとして野菜と一緒に指を二本切り落としてしまう出来事、インディアン的な神秘性を有する謎の隣人そのもの、等々。
 全く意味がないとは言わないまでもアクセント未満のアクセントくらいの価値しかない印象である。

また隕石と共にやって来た謎の物体により水が汚染されたのは確かであろうが、一家が影響を受けるのは水より紫色の光(放射線?)なので、水の問題の扱いが過剰のようにも思える。
 しかし、そう論理的に追及し得る作品ではないのは明らかなので、精密に取捨選択すれば恐らく10分前後短くできたであろうに・・・という文句に留めるのが妥当でありましょう。

Out of の幾つかある意味から考えて、宇宙由来の色、空間からできた(構成された)色、外部の色のいずれとも解釈できそう。原作には「宇宙からの色」「異次元の色彩」の邦題がある。

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この記事へのコメント

モカ
2021年04月07日 13:23
こんにちは。

>コルタサルに通ずる、形而上的な実存主義文学の香りも漂う。

 ラブクラフトは1冊(短編集)しか読んでいないので偉そうな事は言えませんがコルタサルに較べるとゲテモノ感が漂っていたような記憶があります。
 南米出身でフランスで執筆したコルタサスに対してラブクラフトは良くも悪くもアメリカ的にエグイというか・・・


>母親がボーっとして野菜と一緒に指を二本切り落としてしまう

  私が読んだ短編で葬儀屋だったか棺桶屋だったかが桶に合わせて遺体の足を切断するというえげつないエピソードがあったのを思いだしましたよ! アメリカ的直截性? 切断好き?

 調べてみたら結構映画になっているんですね。気持ち悪いのは観ないようにしているので知りませんでした。
 まぁ単に怖がりなだけですけど・・・(笑)



 
オカピー
2021年04月07日 22:29
モカさん、こんにちは。

>アメリカ的にエグイというか・・・

そうですね。
エドガー・アラン・ポーに似たところがあります。

>私が読んだ短編で葬儀屋だったか棺桶屋だったかが桶に合わせて遺体の
>足を切断するというえげつないエピソードがあったのを思いだしましたよ!

僕も映画のエピソードとして見たような気がします。ラブクラフトが絡んでいるかどうかわかりませんが。ブラック・コメディーにも出てきそうです。

>調べてみたら結構映画になっているんですね。

多いですね。
短編を入れたら無数と言って良いくらいあります。