映画評「ステップ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・飯塚健
ネタバレあり

重松清を映画化した作品は、脚本家や監督により多少差があるとしても、概して人情を行間に見せる為好感を覚えるものが多い。この作品はどうであろうか? 

乳児の娘美紀を残して妻に死なれシングル・ファーザーになった会社員健一(山田孝之)が保育園(中野翠咲)、小学低学年(白鳥玉季)、小学高学年(田中里念)を経て、小学校の卒業をもって美紀の育児に一区切りを打つ、というお話。

年齢に応じて異なる、些細なしかし当人たちにとっては大きな問題が起き、それに試行錯誤しながら対処していく様子に実感がわく。
 彼は、保育園時代には時間のある母親であれば容易にできる抱きしめるという行為の必要性に気づかされ、小学校低学年では “母親(亡母)はいつも家にいる” という娘の発言の価値を確認、高学年では負けず嫌い者同士の友情が育つのを見るのだ。

少女が5年生の時に父親に恋人・奈々恵(広末涼子)が出来、美紀は最初は歓迎するものの、次第に壁を作っていく。新しい母親ができることは実母の存在が消されることと解釈したのだろう。
 しかし、立派な母方の祖父母(國村隼、余貴美子)の愛情も奏功して美紀も遂には心を開く。その祖父もやがて病気に倒れ、小学校卒業の前にその死を意識しなければならない。しかし、妻の死から10年の間の種々の経験により、健一も美紀も死は乗り越えるものではないと理解するのである。

当事者あるいは同じような経験をした者でなければ理解できないような隠微な心情が幾つも出て来るが、想像力があれば、その一々についてかなりのところまで解る筈だ。個人的には、祖父の死を(あるいは死んだ祖父を)忘れずにいるのであれば美紀は優しい人になるだろう、という健一の思いにぐっと来た。

片親の、特に母親のいない子供は恐らく気持ちが大人になるのが速いと思う。一歳で母親を亡くした我が亡父はどうであったろうか(気持ちの問題以前に15歳から働いていた)。

胸を打つ状況や台詞が色々とあるが、これまでの重松作品の映画化群であればもっとそこはかとなく描いたであろう部分が、特に後半になって些かくどく描かれる感がある。
 祖父が病気なのに背広を着て格好を付ける病院の場面ももう少しさらりと描いたほうが却ってエモーショナルになったと思う。妻の遺影に話しかけ、それに妻が応えるというのを繰り返すのも余り良くない。主題の一部を形成するものではあるが、そうであったとしても一回で良かったのではないか。

人間というものはひねくれていて、感動を強要されると感動しないものだ。それでも僕は、この映画を観るうち何度か涙が出てきましたよ。CMを見て泣くオカピーを泣かすに大して苦労は要らないのだけれど。

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