映画評「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督フレデリック・ワイズマン
ネタバレあり

フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー再び。
 一週間ほど前に観た「ボクシング・ジム」の倍以上に当たる205分という長尺で、前回はボクシング・ジム、今回は図書館ということで、内容的に違って来る部分も当然多いが、対象に対するアプローチは全く同じである。即実、これなり。

僕は図書館へ行くのが大好きだから、興味深く観始めたが、この図書館の活動の幅広さにかなり驚かされた。当然根幹である書物や映像物の貸し出しも多少紹介される。ベルトコンベヤーで作業されるのは返却された書物の処理であろうか? やや乱暴な扱いが本好きには気になるが、自動的に仕分けられる。
 これを観て僕が利用している町(隣の市、わが市が提携しているので借りられる)の図書館を思い出した。僕の借りる誰も読まないような本が収められている自動書庫(その他、開架書庫というのもある。ここに通常の開架の数倍の書物が置かれている)は、機械が指定された本を自動的に階上まで運んでくるらしいのである。

映画が重点的に扱うのは講演であり、遺伝学者リチャード・ドーキンズ、ミュージシャンのエリヴィス・コステロやパティ・スミスなど多数出て来る。講演ではなく、講義もあるし、音楽や踊りのライブ、一つの本を巡っての意見交換(扱われるのはガブリエル・ガルシア=マルケス「コレラの時代の愛」)をする集いもある。
 それにサンドウィッチされる(あるいはサンドウィッチする)形で、88もの分室があるという巨大図書館の運営をめぐる関係者による議論が紹介される。ニューヨーク市から貰う資金の外、少なからぬ寄付(全体の4割程という)という資金の配分の議論、市民の3割ほどを占めるパソコン非所持者に対する貸与(1年間)をどうしていくか、資料を選ぶ際の基準(需要か価値の高さか)等々。

で、ドキュメンタリーにも拘らず、小津安二郎のように、シークエンスの合間に空ショットを挟むのがワイズマンのちょっと洒落たところで、全体としては即実以外の何物でない作品スタイルになっている中、唯一芸術的な楽しみが出来る部分である。

即実と観照的態度に徹して作者は何の主張も誘導もしないので、見て何を思うかは鑑賞者次第。

大学の後期になって勤め先に国立国会図書館を候補にしかけたことを思い出す。試験に合格して配置されれば、貴重な資料を目の当たりにすることもできたろうか。年数名の極めて狭き門と知って早々に諦めた。同じ国家上級公務員でも省庁めぐりが要らないのは良かったのだが。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント