映画評「暗数殺人」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年韓国映画 監督キム・テギュン
ネタバレあり

韓国映画の悪い癖が出ない刑事映画。タイトルが面白そうなので観てみたが、正解だった。

麻薬捜査課の刑事キム・ユンソクが情報提供者チュ・ジフンと面会している最中に、殺人課の刑事たちが急襲して青年を逮捕する。女性殺害の容疑だ。この犯行を認めた彼は他に6件の殺人を犯したと、殺人課ではないキムに面会を求める。
 これに興味を覚えた刑事は殺人課に異動してもらい、具体的な告白ぶりから真実を言っていると確信、他の刑事たちの迷惑そうな顔を押し切って、死体の掘り起こしにかかる。ところが、死体は被害者と目した女性とは別人と判明、全く行き詰る。犯人の言動も時にひっくり返る。
 犯人に煽られて捜査に没入した結果刑事を止める羽目になった元刑事曰く、チュは別の事件を捜査させて証拠不十分で無罪を勝ち取り、刑事の手法を疑義を生じさせ、最初の事件でも判決をひっくり返させる作戦であろう、と。実際に、数少ない時効の来ていない刺殺事件の起訴は無罪に終り、逆に起訴される。
 この責任を問われて交番に左遷させられたキムは、しかし、遺骨発見時の写真に避妊用リングを発見、これが時効前の殺人被害者のものと確認され、チュを追い詰めていく。

日の当たらない殺人事件の被害者の無念を思って真面目に事件と格闘する刑事と、彼を或いは警察を翻弄する犯人との一騎打ちの物語で、実話ベースとのこと。

韓国の犯罪映画では、概ね刑事は悪として批判される対象という以上に間抜けな存在という形に扱われることが多いが、本作の主人公は刑事映画ということもあって極めて良心的、自腹(一族のお金だが)を切って犯人の告白を引き出すという必要悪を講じてまで、被害者を特定していこうとする。
 この直接対決が極めて正攻法に段取りよろしく見せられ、自ずと手に力が入っていく。変なギャグで観客の緊張感を解くような不手際もない(相棒になった後輩刑事チン・ソンギュが大きなネズミに驚くというのが一番のユーモア)。画面も必要に応じて細かくカットを切ったり、やや長めの移動撮影を使ったり、若手らしい監督キム・テギュンは将来性があると思う。

唯一気になるのが、神と犯人しか知り得ない過去の場面3か所の唐突な挿入で、三度目だけは直前に犯人が写されているので明快に犯人の回想と解釈できるが、最初の二回は回想とも、映画的な(=神の視点による)巻き戻しとも断定しにくい。問題はどちらかに断定できないことではなく、唐突さに観客がストーリーを理解する上で混乱しかねないことである。こういう問題は最初から突然回想若しくは巻き戻しが入るような映画であるというちょっとした予告をしておけば回避できるのだが、まあ大きな難点ではない。

韓国刑事映画の秀作「殺人の追憶」(2003年)の迫力に及ばずも、刑事の足を使った地道な捜査と犯人の頭の良さが奏功して相当楽しめる。これに比較的近い内容の2002年の邦画「模倣犯」(世評は酷評ふんぷんたるものだったが、そこまで悪くない出来栄え)は凌いでいよう。

本ブログ内にある検索エンジンが使えない(役に立たない)。「殺人の追憶」も「模倣犯」も記事を探し出すのに苦労しましたぜ。皆さま、迷惑をおかけ致します。“けんさく”と言えば、森田健作が千葉県知事を卒業した。彼は何をやりたかったのかなあ? 少年時代の良い思い出を台無しにしたよ。

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