映画評「ワイルド・ローズ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年イギリス映画 監督トム・ハーパー
ネタバレあり

音楽を巡るドラマ映画は色々あるが、カントリー畑は割合少ない。僕が観たのは本作でも絡んでくるグランド・オール・オープリーを開催するナッシュヴィル市をテーマにしたその名も「ナッシュビル」(1975年)、ロレッタ・リンの伝記映画「歌え!ロレッタ愛のために」(1980年)、ジョニー・キャッシュの伝記映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005年)、ハンク・ウィリアムズの伝記映画「アイ・ソー・ザ・ライト」(2015年)くらいしか思い浮かばない。最後の2本は実話・伝記映画が大量に作られるようになった近年のものだから、やはり少ない。

ロックの隣接ジャンルでもあり一通りの興味があるカントリーの歌手では、ドリー・パートン、ロレッタ・リン、タミー・ワイネットのベストを持っている。ロック寄りではリンダ・ロンシュタットも数枚持っている(持っているという場合は自作CDではなくお金を出して買ったという意味なり)。男性ではハンク・ウィリアムズの三枚組、ジョニー・キャッシュの名ライブ盤「アト・フォーサム・プリズン」、戦前活躍したジミー・ロジャーズのベストを買った。
 それとは別に、昨年ウィリー・ネルスンの名盤「レッド・へッデッド・ストレンジャー」と「スターダスト」を合わせてCDを作った。他に興味があるとしたら、ウェイロン・ジェニングズといったところだろうか。バリバリ現役の若手テイラー・スウィフトはマストなのでしょうなあ。

閑話休題。
 現在のグラスゴー。麻薬を麻薬吸引で服役中の若者に渡した罪を負って服役した25歳くらいの熱烈なるカントリー歌手志願ローズ=リン(ジェシー・バックリー)は、8歳の娘と5歳の息子の世話をしてもらっていた母親マリオン(ジュリー・ウォルターズ)に、夢を追うのを諦めて堅実に生きなさいと言われるが、そう易々と諦められるものではない。裁判官の判断を経て追跡用のタグを外してもらうと首を切ったクラブの舞台から後任者を追っ払って、10年以上の付き合いのバンドを従えて軽快に歌い出す。
 勿論それだけに頼るわけには行かず、富豪の掃除婦となって歌っているところを見込んだ雇い主の奥さんスザンナ(ソフィー・オコネドー)が、パーティーで歌を披露して資金を募り、それを資金源にカントリーの本場ナッシュヴィルに出かけてみたらというアイデアを提案する。しかるに夫君が彼女の前科を知ってパーティーを終えたら家から出るよう脅すと、これに傷心したローズ=リンはパーティーで企画主スザンナに真相を告白し帰宅してしまう。
 夢を諦めようとすると今度は母親が見かねて長年積み溜めたお金を彼女に渡しナッシュヴィルへ行かせる。町と舞台を見聞して満足した彼女は、しかし、この経験により自分の生まれ育った町が一番と実感、それをテーマにした歌を作ってちゃんとした歌手としてステージで披露する。

ちょっとしたサクセス・ストーリーとして終わるが、浮かび上がるのは故郷への思いである。彼女はきっと町が育てるスターとなっていくであろう。

ケン・ローチが社会派の要素を取り払って作ったようなタッチの作品で、後半少し出て来るナッシュヴィルの描出が対照を成しているところが映画的に面白い。全体としてはジェシー・バックリーを見る作品で、カントリー歌手にふさわしい歌唱を披露している。リンダ・ロンシュタットに近い歌声と思う。
 ヒロインの名前と関連付けて、序盤に小学校高学年か中学校の初めの頃に流行ったリン・アンダースンの懐かしい「ローズ・ガーデン」がかかる。

「ローズ・ガーデン」はサビから始まる曲。先般亡くなった筒美京平はこのサビをAメロに変えて新人・南沙織に「十七才」を提供した。彼女が歌えると言った曲が「ローズ・ガーデン」だったという。それを別にしても、彼は本当に洋楽をよく取り入れた。本歌取りという伝統のあることすら知らない日本無謬論者は“日本にパクリの文化はない” と隣国二国を貶める(別に彼らを褒めるわけでもない)が、パクリという言い方はともかく、日本人は先人を尊敬しその作品を大事にしてきた。桑田佳祐も殆どの曲において外国あるいは日本の先人の作った曲を取り入れている。端倪すべからざる才能で、ビートルズの「アビイ・ロード」をパロって社会風刺した「アベー・ロード」(公式発売なし)は神がかりである。

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