映画評「AI崩壊」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・入江悠
ネタバレあり

日本のサスペンス大作はハリウッドのそれに到底敵わないが、本作はなかなか健闘している。それを考慮してやや甘めに採点した。

2030年、開発したAI医療システムの厚労省による承認が妻・松嶋菜々子の癌死に間に合わず失望して幼い娘(田牧そら)と海外に逃避していたIT開発者大沢たかおが、継続した義弟賀来賢人のおかげで国に認められ国民の命を救った功績の表彰の為に帰国する。ところが、会場に向かう前にそのAI “のぞみ” が暴走し、多くの患者が異変を訴え出し、総理大臣余貴美子まで亡くなってしまう。大沢はAIに異変をもたらす端末を所持していたことからサイバーテロ容疑者として追われる。
 身に覚えのない彼は、逃亡しながら義弟と暗号的な連絡を取り合って、解決方法を探る。異変の前に家族写真を探しに戻った娘が暴走したAIにより、やがて冷却される密室に監禁状態になった為、その命も救わなければならない。

というお話は、追われながらの犯人探しのヴァリエーション。IT時代で、まして本作のように個人情報が一々把握されている状況であるから逃亡にも色々と苦労が強いられ、その難関を潜り抜ける面白さがある。ネット黎明期の「ザ・インターネット」(1995年)と似た設定だが、思想までもデジタル化する中で、追う官憲側にアナログ刑事・三浦友和と広瀬アリスを加えたのが一応のアイデアである。

本作一番の疑問に付されると思われるのが、AIの暴走を止める手段を持っている唯一の人間かも知れない大沢を官憲が逮捕どころか、必要次第で抹殺しようとすることである。ところが、この暴走のからくりを警備局理事長・岩田剛典を筆頭とする捜査側が仕組んだことが判明した段階(僕は事前に真犯人の予想はついていたが)で、その疑問は一掃される。問題を解決して貰っては困るグループが捜査しているのだから、当然なのである。【Yahoo!映画】でこの疑問を呈した御仁も彼に賛同した御仁も、残念ながら、映画がそれを犯人特定のヒントとしていたことに気付いていない。

それより、この映画の問題点は、AllcinemaのD氏が指摘するように、日本のサスペンス(の悪弊)に洩れず、終盤が情に流され過ぎることにある。情に流されると、どうしても描写が長くなり、モタモタしてくる。冷凍症で生命が危ない娘を救うことが国民を救うことに直結する設定は良いが、その解決部分はもっとスピード感をもって描くべきではなかったかとは思う。ただ、スローモーションなど大袈裟なカメラワークを使っていないところは、他の同種サスペンスより好感が持てる。インディ映画でスタートした入江悠の感覚が発揮されているのだろう。

直接の主題にはなっていないものの、管理社会の問題と、AIが人間の知能を超える2045年問題が強く意識されている。前者には一長一短があるが、上手く活用されれば長所が短所を超える可能性が高いと思う。2045年問題については、文系の僕は定見を持たない。

マイ・ナンバー・カードに何もかも盛り込むのは問題があるねえ。一つに集中すると、失くす可能性が増え、同時に失くすと何もできなくなる。書類を現状通りに維持するならまだ良いが、さもなければ僕は反対である。情報流出等の問題以上にそちらのほうが気になる。

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