映画評「家族にサルーテ! イスキア島は大騒動」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年イタリア映画 監督ガブリエレ・ムッチーノ
ネタバレあり

昔はこういうイタリアの家族映画も日本でそれなりにヒットしたものだが、最近は若者に傾く日本映画が当たり、さもなくばスペクタクルな米英のメジャー映画がヒットするだけ。映画興行界が比較的若い年齢層にターゲットを絞っている為、欧州のドラマ映画が昔のようにヒットする余地が全くない。そのせいで我々オールド・ファンが楽しめる映画が非常に減っている。
 そこで古い映画を求めても、NHKもWOWOWも限られた映画以外放映してくれないし、ネットも多少マシなくらい。愚痴はともかく本作はイタリアらしい大変賑やかな大家族映画である。

大家族と言っても、常に同居している家族ではなく、1960年代ピエトロ・ジェルミの映画で重用されたステファニア・サンドレッリとその夫の金婚式に、本土に程近いイスキア島に子供たちや兄弟、甥っ子姪っ子、その子供たちが集まって来るのである。
 厳密にはステファニアというより夫の一族で、彼の姉にこれまた懐かしいサンドラ・ミーロ(フェデリコ・フェリーニ監督「魂のジュリエッタ」での妖艶美人が印象的)が扮する。ステファニアもサンドラもそれほど変わっていず、すぐに分かった。
 それ以外の男女優はイタリアでは有名なのだろうが、年間数本観られるかどうかのイタリア映画の現状では名前と顔が一致する人がいない。

さて、ちょっとした結婚式もどきの金婚式が終わり、一同が帰ろうと思ったら、嵐の為にフェリーが当日欠航と知らされる。老夫婦の家の外、分散して宿泊することになるが、そこから大騒動が始まる。
 夫婦の長男を巡る前妻・後妻の激しいバッティング。子供ができるのに無職のサンドラの息子が従妹夫婦が経営を継いだレストランの仕事を希望するが、相手に信用されていず、もめる。詩人として名を成した次男は、デラシネであることに負い目があるが、母親からは支持されると共に、遠い親戚で幼馴染の美人と初恋の慕情を爆発させる。それを彼女の娘に見られて困惑。そこに思春期の子供たちの恋愛ごっこが加わる、という具合。

本作は潜在していたそれぞれの家族の問題が噴出したところで終わる為に重くすっきりしないので、コメディではないんじゃないのという声が例によって聞かれるが、欧米では典型的なコメディと見なされると思う。何度も言ってきたように、日本人はコメディの分派ジャンルであるファルス(笑劇)とコメディを混同している為かかる指摘が為されることが多い。

当事者には悲劇的であっても、本作の如く、修羅場に次ぐ修羅場という構成で、その当事者が別事件の当事者と交錯すると、ゲラゲラ笑えなくても、第三者的にはニヤニヤしたくなる。人間の思いがけぬ裏側をさほど殺伐としない方法で描くのがコメディの本質であって、それが笑えるか笑えないかは鑑賞者次第である。本作など構成から言っても、内容から言っても、見せ方から言っても、典型的な “コメディ”と言って良いと思う。

すっきりしないという意見はよく理解できると同時に、 “それでも人生は続く” 式の典型的な終わり方であろうとも考える。ハリウッドで活躍しイタリアに戻ったガブリエレ・ムッチーノとしては本国で当たりを取ったので “してやったり” というところだろうが、人物の捌き方が甘くてさほどニヤニヤできず、潜在力を考えると物足りない。音楽はヨロシ。

それに対して、嘘や誤解が露骨にギミックとして扱われるのがシチュエーション・コメディ。そんなところでしょ。

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