映画評「サムライマラソン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本=イギリス合作映画 監督バーナード・ローズ
ネタバレあり

いつまで経ってもWOWOWに出て来ないので、無料プライム会員中にと、プライムビデオで無償鑑賞。別に後でも良かったのだが、実はこの映画のテーマである安政遠足(あんせいとおあし)マラソンが行われる街道の近くに住んでいる地元の人間なので、昨日の「ひとよ」に主演の佐藤健が出ているのを見て思い出したのだ。本来は映画館に行かないといけなかったのだが、全く(非国民ならぬ)非市民ですわ(笑)。
 実はこの遠足(とおあし)については、64年前に勝新太郎主演で「まらそん侍」という映画が作られていて、鑑賞済み。地元の人すら知らないのだが。

最近多いコメディー型でも、若者向きのファンタジー的な時代劇でもなく、終盤を別にすればそれなりの本格派時代劇である。

1855年。黒船が現れてから一年後。上州の小藩安中(あんなか)藩で藩主・板倉勝明(長谷川博己)が、開国ムードに抗い、藩士を鍛えようと藩に所属する武士・足軽に熊野権現神社を折り返し点とする遠足即ち現代風に言えばマラソンに参加するよう下知する。
 海外に憧れ江戸で絵画の修行をしようと思う娘の雪姫(小松菜奈)は勝明に抵抗して家を出、やがて男装して出発点にやって来る(これで正式に関所を通り抜けようと思ったのであろうが、この辺りはお話として色々無理がある。今読んでいる「大菩薩峠」にも関所を抜けるため男装した女人がよく登場する)。
 藩勘定方の唐沢甚内(佐藤健)は実は幕府の隠密で、遠足を倒幕の動きと早合点してしまい、取り消しに必死。結局なすすべなく遠足当日に至るが、実は開国派の上司・植木(青木崇高)は江戸の大老五百鬼祐虎(豊川悦司)の藩取り潰しの画策に協力しようと甚内ともみ合う。
 これに並行してならず者に身をやつした五百鬼の刺客たちが関所を破った為、彼らを倒すべく甚内、雪姫、雪姫を妻女に迎えようと狙っている辻村(森山未來)が一致団結する。

途中まで見通しが悪く、狙いが甚だ不鮮明だが、刺客が現れる辺りから着地点が見えて来て漸く面白くなる。
 とりわけ膝を打たせるのが、外国に憧れる雪姫が開国反対の父親の治める藩の為に大奮闘し、非開国派の藩主が開国の象徴であるピストルで刺客を仕留める、という終盤の流れ。つまり、親子の和合を一瞬にして理解させる映像の扱いが鮮やかで、こういうのが僕は好きだ。

地元の人間としては、実話ではないにしても、こうして現在の安中市があるのではないかと思われてきて感慨無量になるのである。監督は「不滅の恋/ベートーヴェン」(1994年)という伝記映画の秀作を作っている英国のバーナード・ローズで、大体においてタッチが抑制されているのは良いが、さすがに日本的なわびさびの感覚が足りないかもしれない。

15年前の遠足マラソンの模様を収めた写真と配布された団扇を貼付します。

P5082606.JPGP5082628.JPG

長野県の軽井沢は僕らの庭みたいなもので、中学の遠足(えんそく)では横川駅から県境をまたがる熊野神社まで歩いた。本作のコースに出て来るようなけもの道、時に大木が倒れているようなところを女生徒も通って行ったのだ。この映画の画面を見て懐かしく思い出した。女生徒が僕を捉まえて“ニヒルねえ”などと言っていたっけ。僕のどこがニヒルだったか知らないが。

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