映画評「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年カナダ=ベルギー合作映画 監督キム・グエン
ネタバレあり

カナダ=ベルギー合作映画ながら、最近の映画に多くあるように、アメリカが舞台。
 カナダ映画は【今じゃ落ち目の三度笠】状態になった大スター(ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック等)が出演の機会を狙う現場となっているが、本作はジャンル映画ではなく、なかなかきちんとしたドラマで、光回線のスピードを争うお話であるせいか、「ソーシャル・ネットワーク」で注目されたジェシー・アイゼンバーグが主演している。

株式取引の高頻度取引に関わる企業に勤めるアイゼンバーグは、数学の天才である従兄アレクサンダー・スカルスゴードと新しい計画を実行に移すべく、会社を退職する。カンザス州のデータセンターからNY証券取引所までの通信時間を0.017秒から0.016秒に短縮する為に人家、山脈等を回避せずに完全なる直線で結ぶという作戦である。
 勿論問題も多い。資本提供先は既に見つけ出している。最初の問題は買収であるが、これは地下を使わせるだけでお金が貰えるというのでキリスト原理主義のコミュニティーを除いて割合順調にいく。岩盤の問題は業者に解決を求む。最大の難関は元の雇い主サルマ・ハエックの妨害工作で、彼女は法に触れないレベルなのにFBIに国家の危機と訴えてスカルスゴードを捕えさせるのである。アイゼンバーグにも末期の胃がんが発覚する。
 やがて、殆ど完了という直前に、元の勤務先が決定的な設備を作ったことを知り、負けを認めざるを得なくなる。

実話ベースというと成功談が多いが、主人公側が挫折に終わるという最近では珍しいタイプ。

科学的なことはよく解らないが、通信における1000分の1秒差が最終的に莫大な利益の差を生むという株式取引の面が興味深い。90年前の「ドクトル・マブゼ」の頃とは大分違いますな(当たり前)。
 本作の主人公は、昨日の「リチャード・ジュエル」の主人公に似て目標に向って文字通り迂回できない性格であるが、かの主人公がパーソナリティ障害の可能性を否定しきれないのに対し、こちらは知性にも感性にも問題なく、ひたすら信念が主人公を動かすのである。

CIAに比べて正義の味方のような扱いをされることが多いFBIについても二日続けて問題が提示される。本作はそこまで強く訴えないが、裁判所と違って彼らに疑わしきは罰せずという金科玉条は通用しないらしい。やれやれ。

そこはかとなく垣間見せるのは、移民問題あるいは人種民族差別である。アイゼンバーグ君の片腕マイケル・マンドが中南米からの移民で、最初の土地所有者から相手にされないのである。仕事の上手い下手は関係ない。理不尽であると義憤を感じる次第。

人生ドラマと企業サスペンスと社会派映画を兼ねて、なかなか興味深い内容なのだが、事業の挫折と病気の為に失意の主人公が原理主義者たちのところへ行く幕切れは、主人公の悟りに達した境地を感じさせる。経済至上主義の否定のようでもあり、主人公に挫折したがやりきったという印象が伴わないのは一代記として物足りない。空しさだけでは見ているこちらもしゅんとする。

大手投機者が数字のみに依拠するコンピューターに任せるから、株価が極端に上下する。小選挙区制が一つの党を大勝ちさせるのに似ている? アメリカと違って日本は二大政党制は無理と判ったので、中選挙区制に戻すべし。このままでは日本は、中国もどきになる。

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