映画評「チャンピオン」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1949年アメリカ映画 監督マーク・ロブスン
ネタバレあり

ボクサー映画の佳作である。中学の時にTV放映された時は観なかったと記憶する。途中の野外での練習風景は記憶があるが、別の映画だったか? 

父親が家出をし、母親も育てる資力がなかった為に孤児院で育った兄アーサー・ケネディーと弟カーク・ダグラスが一旗揚げようとヒッチハイクで旅を続けるうち、女性連れのボクサー選手に拾われる。これをきっかけに喧嘩の強いダグラスはボクサーの経験を踏むが、魅力を見出せず小ドライブインに雇ってもらう。そこの娘ルス・ローマンに二人とも好意を抱くが、強気のダグラスが射止め、父親の反対で形だけの結婚をし、兄弟は別の仕事を求めて旅立つ。
 やがて、以前話を持ち込んできたボクシング興行師ポール・スチュワートと話をまとめ、彼をマネージャー兼トレーナーとしてダグラスはボクサーとして順調にランクを上げていく。将来の布石として八百長を持ち掛けられるが、結局ヒッチハイクで知りあった時から気に入らない高慢女マリリン・マクスウェルの鼻を明かしてやろうと勝ってしまう。
 これに面白くないが故に却ってマリリンはダグラスに接近して興行師の真似事を始め、新しいマネージャーを付ける。かくして彼はチャンピオンになるが、マネージャーの妻ローラ・オルブライトと昵懇になったことから、結局スチュワートと再契約することになる。
 いよいよ始まった防衛戦、ダグラスは調子の出ず敗色濃厚となった最終ラウンドでマリリンを見て、俄然負けん気が持ち上がり、物凄い逆襲をしてKO勝ち。が、激しく打たれた為に脳溢血を起こして控室で死んでしまう。

主人公の性格を見せる作品である。根は善良だが貧しい育ちのせいで負けん気が強く、実力を付けると自信家になって様々な人を傷つけることになる。そうした彼の後天的な性格は観客に共感を呼ばない。これ以前の作品が主人公に寄り添うように作られていたのに対し、本作は戦後リアリズム志向が急激に強まった時代に作られただけあって、ある意味現実的な嫌な男に仕上げたわけである。
 が、防衛戦のシークエンスになると、彼の性格が生れついたものではないことを示して終わる。つまり昔の映画の名残りを残して終わるわけである。少しなまなかになった所以であるが、彼の性格を軸にしたストーリー展開は今でも見応えがあり、この映画で彼が演じた性格は俳優ダグラスの方向性を決定したと思う。

この映画を観て考えた。加害者を弁護する時に“育った環境が彼を、云々”と言われることに反感を覚えることが多い。同じ環境に育っても大多数の人は犯罪を犯さない。やはり生まれついての性格という問題があるだろう、と。同時に、仮にそうであっても、良い環境に育てばまともな人間になった可能性が高いであろうとも考える。人間をそう単純に裁いてはいけない。最近ドラマ映画を観て登場人物の良からぬ性格を根拠に作品をけなす人が多いが、映画批評としてなっていないという以前に、発言者が自分をどれほど立派な人間と思っているのかという疑問が湧く。明らかに原体験が足りない。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント