映画評「日本海大海戦」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1969年日本映画 監督・丸山誠治
ネタバレあり

東宝8・15シリーズ。
 新東宝の「明治天皇と日露大戦争」(1957年)を下地にしたようなところがあるが、新東宝作品が明治天皇に軸を置いたのに対し、本作は連合艦隊司令長官の東郷平八郎(三船敏郎)に主軸がある。

1903年末、日本は義和団の事件に出兵した各国のうち満州に野望を抱いて同地に残ったロシアに対し危機感を覚え、電報で抗議するが全く無視され、開けて1月、ロシアと遂に開戦する。陸においては乃木希典大将(笠智衆)、海においては東郷が苦闘しつつ勝利への道を探り続ける。

お話は陸海のバランスが違うだけで、「明治天皇と日露大戦争」と大同小異ながら、大分がっちりしている。明確な反戦・反軍映画というわけではないものの、勝ち戦の苦みを指摘して終わるところに四半世紀後の満州に発端を持つ太平洋戦争は避けられたのではないかという意識が滲み出る。

断然素晴らしいのは、円谷英二による特殊撮影で、艦隊の描写がぐっと多く、そこそこ頑張ったという印象の新東宝作品と比較にならない迫力。
 第二次大戦の海軍ものは飛行機が関わってきて、寧ろ見せ場を奪ってしまうのだが、まだ飛行機など関係ない日露戦争を舞台にする本作は当然海に特化することになる。単調になりがちな海戦を特撮の優秀性でしのいだところを買いたい。

加山雄三の少佐の消え方がかなり変。

当時の裏戦争史にこんなのがある。東大医学部と森鴎外の意見を取り入れる陸軍は米だけを食べさせて数万人の脚気による死者を出し(明治27~28年だけで死者4000人)、ビタミンを含む麦を食べさせ始めた海軍は以降僅か数人に収める。乃木の苦戦の原因の一つだったかもしれません。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2020年08月17日 13:40
8.15シリーズは、「日本のいちばん長い日」から全部観てますが、この作品は子供の頃、コント55号の喜劇と併映で観ました。
大人になってから観なおしても、円谷英二最後の特撮監督作品とあって、感慨深いですね!

ソ連が内部崩壊(ロシア革命)の時期にあったとはいえ、負けたら自由主義国でない相手の植民地になる罰ゲームに、よく勝てたな‥と思いますよ。
憲法違反ギリギリの予算編成までして戦艦三笠を作り、
割高な俸給を支払ってお抱え外国人を雇い、出来ることはすべてやってもなお、当時の指導者たちは恐怖でしかなかったでしょうね・・。底知れぬ知見と胆力を持っていたなと感動します。
ただ、劇中「次の相手はアメリカだ!」というのは無いですね!戦後、日本は軍縮条約に批准してるので・・。

>太平洋戦争は避けられたのではないかという意識が滲み出る。
避けられたでしょうね‥砂を噛む覚悟があれば、310万の犠牲を出すことは・・。
ただ、僕は、誤解を恐れずに言えば「(先の大戦は)結果オーライだった」と思います・・。
万万が一、ベトナムみたいアメリカに厭戦ムードが広がって日本が勝っていたら(といっても第三国による講和による勝利)おそらく、相当にヤバい社会になっていたでしょうね。ソビエトユニオンが健在な以上、満州の権益も、タダですむとは思えぬ・・。

>ビタミンを含む麦を食べさせ始めた海軍は以降僅か数人に収める。

野菜の缶詰などは、当時もあったはずですが・・・。大航海時代を経験してない日本は、海洋航行のノウハウの蓄積に乏しかったでしょうね・・。
16世紀のスペインやイギリスの軍艦では、長期保存のできない水の代わりにワインを大量に積みますから、十代の見習い軍人でもアル中が多かったようですね・・。

時代は下りますが、ドイツのU-boatの乗組員は、太陽光線を浴びることができないので矢鱈にレモンを齧り、トマトスープの缶詰が命綱でした。
オカピー
2020年08月17日 22:20
浅野佑都さん、こんにちは。

>8.15シリーズは、「日本のいちばん長い日」から全部観てます

当方、6作品のうち明らかに観ているのは4本。どちらにしても映画館では一本もありません^^;

>円谷英二最後の特撮監督作品とあって、感慨深いですね!

いや、僕は知らなかったです。良い仕事してますね(笑)

>底知れぬ知見と胆力を持っていたなと感動します。

しかし、それが変な根性論を植え付けてしまって、太平洋戦争へ精神的道筋をつけてしまったと思います。

>劇中「次の相手はアメリカだ!」というのは無いですね!

歴史的にも疑問を感じます。アメリカが大国になるのは、第一次大戦後ですので、当時の日本にアメリカを意識していなかったと僕は想像します。最後のナレーションと呼応させる為の台詞だったのか?

>僕は、誤解を恐れずに言えば「(先の大戦は)結果オーライだった」と思います・・。

ソ連との絡みではそうかもしれませんね。

浅野さんの仮定とは真逆ですが、僕が思うのは、少なくとも敗戦した日本がソ連の統治、若しくはアメリカとソ連の分割統治にならなくて良かったと思います。後者の場合、最悪を想像すると、朝鮮半島状態になりますしね。
 しかし、逆説的に考えると、日本も一度共産主義を経験してそこから抜け出すという歴史も面白かったかもしれない。

>ドイツのU-boatの乗組員は、太陽光線を浴びることができないので
>矢鱈にレモンを齧り、トマトスープの缶詰が命綱でした。

100年ほど前までビタミンの存在が知られず、軍医のトップに立った森鴎外は、カロリー総量が人間の命の総てであると考えたらしいです。で、陸軍はそこから全く抜け出せず、森が亡くなった後にやっと食事の改革を始めたらしいですよ。日本の軍隊の場合、自分達が正しいというプライドが多数の死者を生んだのだと思います。