映画評「最高の人生の見つけ方」(2019年版)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・犬童一心
ネタバレあり

2007年のアメリカ映画「最高の人生の見つけ方」の日本女性版でござる。観る前は余り気乗りしなかったが、監督が老人をテーマにした作品の多い犬童一心ということもあって、きちんと作られていた。二番煎じだからオリジナルより★一つ分減らしたが、オリジナルの設定を生かしつつ日本風に或いは女性故に変えた部分が上手く機能してなかなか楽しめる。

大学卒業と共に夫君・前川清と結婚して50年経つ専業主婦吉永小百合が末期がんを発症、ホテル業界の女経営者天海祐希と同室となる。夫君はすっかり検査入院と信じ込んでいるが、娘・満島ひかりにだけは真相を告白する。しかし、会社の中堅管理職である娘は、父親と引きこもりの弟・駒木根隆介の世話を彼女に押し付けようとする母親の要請を拒否する。
 二人のがん患者は、糖尿病を患う12歳の少女鈴木梨央と知り合うが、少女は間もなく死去。残された手帖に十項目のやりたいことを見出す。一応の退院後、吉永主婦は傲慢の背後に弱々しさを持つ天海社長と共にその十の項目にトライする。

オリジナルと一番違うのは、この項目を考えたのがご本人たちではなく、12歳の少女であるという点である。これにより、願いの大半が高齢者に似合わないというギャップと、それをどう実現するかという意外性という興味が生れる。そして、この年齢差により、違う世代の思いがけぬ交流が起り、ヒューマンな感動も生れる。ここがうまい。
 IMDbの投票結果(日本映画の例に洩れず、数は非常に少ない)の惨憺たる平均点にも拘らず、僕はこの映画の内容を軽んずるべきではないと思う。日本人だから解るところが多いにしても、それ以上に案外作り込まれている印象を僕は持つのである。

安易に感動を喚起しようと強引な流れという印象がなくもないが、僕は次の箇所が気に入った。
 二人は項目の一つである巨大なパフェを食べに何故か京都へ行く。しかし、それは吉永主婦が、天海社長が蛇蝎の如く忌避してきた老人ホームにいる実父との再会を期してのものである。社長はやはり拒否して、近くの公園へ行く。そこに鉄棒がある。逆上がり(これも項目の一つ)のできない彼女は、出来ないと思ってやったところ、何と出来てしまう。それを介護士に車椅子を押してもらう老父が見て“偉い!” と褒めるのである。老父は認知症で娘を認識できないのであろうが、彼女はそんな父を見て旧悪を許す気になる、というシークエンスである。

主婦が長いこと引きこもっている息子に“好き” と言う最終盤も胸を熱くさせるものがあり、日本社会の問題を示しつつ、少女の願った“好きな人に告白する” という項目を見事にクリアする。最後の実現不可能なはずの宇宙飛行の願望も上手く処理している。冒頭の場面がその一部であるのは気に入らないが。

オリジナル同様に金持ちにしか出来ないことが多いのが、貧乏人のやっかみとして少々引っかかるものの、家族との場面や結果的に他人に善意を施す内容を用意して、お金=幸福ではないということを辛うじて提示できているので、まあ良しとしましょうか。

全体として要領良く(調子が良いと言えないこともない)作られていて、僕のような素直な(!)年寄は、こういう内容にぐっと来る。

僕の死ぬまでにやりたくないこと、十の一。政治的な主張を持つこと(つまり持たないでいることが目標)。

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