映画評「さらば愛しきアウトロー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年アメリカ=イギリス合作映画 監督デーヴィッド・ロウリー
ネタバレあり

1936年生まれのロバート・レッドフォードが引退すると宣言した作品だそうだ。現物に即してのみ映画を見る習慣がある僕は知らなった。これもまた実話もの。しかし、実話ものにありがちな硬直した印象が薄いのは、かなり自由に作ったということだろう。
 監督は「ア・ゴースト・ストーリー」のデーヴィッド・ロウリーで、当たり前ながら今回は実に解りやすい。但し、画面感覚の良さはこの作品にも発揮されている。

1980年代初め、70代のフォレスト・タッカー(実在、但し実際の彼は1920年生まれなので、この時は60代になりたて。50~60代と言っている最初の銀行支店長の証言が実際に近い。彼を演ずるレッドフォードに合わせて70代にしたのかもしれない)は、同世代の仲間二人と組んで、紳士的に銀行強盗を働き、死傷者を出さずにそれを繰り返す。
 少々疲れ気味の刑事ジョン・ハント(ケイシー・アフレック)が彼を逮捕するという目的が出来たことで元気を取り戻す。
 タッカーは、古い自動車に悪戦苦闘していた老婦人ジュエル(シシー・スペイセク)と知り合い、たまに会う伴侶のようになっていく。少年時代以来16回の脱走に成功した彼は、彼女の頼みを聞いて刑期を全うするが、彼女の牧場へ戻った後俄かに虫が騒ぎ出してまた強盗を働く。

若い時代はロマンティックな作品への出演が多く、「明日に向って撃て!」以降は犯罪系列映画の出演が目立ち始めたレッドフォードの映画歴が反映されたように、その両面が一つの作品に味わえる。とは言っても、老男女の関係は実は達観したような境地のようで、愛だの何だのと言わないところが実に良い。
 それを含め総じて監督がレッドフォードにオマージュを捧げたような作りで、彼の脱走場面には「逃亡地帯」の場面を使い、変装には「明日に向って撃て!」のサンダンス・キッドのような髭を使わせている。

主人公は、言わば紳士の愉快犯で、お金ではなく強盗そのものがもたらす快楽に没入している。
 この映画が頗る良いのは、対する警察側特にハント刑事が逮捕までの道のりを楽しむ境地にあること。つまり、刑事もまた相手の逮捕を眼目としているのではなく、駆け引きがお楽しみなのである。だから、彼の逮捕に生きがいを感じ始めたとは言え、眼前にいるのがタッカーと察せられてもただ見送るだけで、その直後にFBIに逮捕されても悔しがる様子もない。同種の人間だけが行える心情の交換における余裕が本作を心地よいものにしている、と言うべし。

銀行強盗が何度も行われ、刑事がかなりの時間出場する映画であるにもかかわらず、仲間の一人(ダニー・グローヴァ―)が負傷する以外に殺伐とした場面がないというのが嬉しい。最近ではちょっと例がないのではないか?

怪盗紳士、と言えばアルセーヌ・ルパンですが。

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