映画評「きみと、波にのれたら」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・湯浅政明
ネタバレあり

湯浅政明というアニメ映画監督は終盤に画面が壊れそうになるまでサイケデリックな怒涛の画面を見せるところが気に入っているが、その意味では青春恋愛アニメ仕様の本作はやや肩透かし気味。

それにしても、【W座からの招待状】に日本製アニメまで登場するとは、半世紀の長きに渡って映画は洋画を軸に見て来た僕としては、同コーナーの邦画への傾倒ぶりには再考を要求したいほど(6月の予定も4本中3本が邦画だ)。

子供時代に住んだ海浜地区にある大学に通い始めた向水ひな子(声:川栄李奈)は、不良たちの違法花火による延焼で越したばかりのマンションから焼き出されるが、同じ建物の別室へ越して事なきを得るだけでなく、その時助けてくれた少し年上の消防士・雛罌粟港(声:片寄涼太)と知り合って意気投合、かけがえのない恋人同士になる。が、彼女の発言が元で一人冬の海にサーフィンの練習に出かけ還らぬ人になる。

始まって三分の一強を過ぎた辺りで主人公(日本語字幕において黄色で表示されるのは主人公、青が二番手、緑が三番手)の港君が死んでしまうので、これは幽霊にでもなって出て来るのかと予想させる。実際、ひな子を助けるという生前の約束を忠実に守って、彼女が水のあるところで思い出の歌を歌うと彼がその水の中に現れるという寸法。幽霊というよりは妖精ですな。

透明の水稲やスナメリの形をした浮袋をいつも抱えて出歩く様子に港の後輩で密かに彼女に憧れている川村山葵(声:伊藤健太郎)が心配し始める。それを見てヤキモキするのが、港の妹で山葵に実はほの字の洋子(声:松本穂香)・・・というのが主な、と言うより、ほぼ全ての人物相関図である。

恋人を失った女性サーファーが恋人なしでも生きていけるようになるまでの再生を描く内容で、ファンタジーという見せ方において湯浅監督の旧作群と大差ないし、前回の「夜明け告げるルーのうた」以降の系譜を構成していくものになると思う一方、港がひな子をヒーローとしている理由など色々な伏線が回収され丁寧に作られている印象を認めつつ、青春恋愛ものという枠のうちに作られているために爆発力が足りない印象が否めない。二度目の火事で水の精と化した港が大活躍するクライマックスに彼らしい華々しさ(大量の水が出て来るだけに正に怒涛と言うべきか?)があるけれど、湯浅監督でなくても見られるレベルではないだろうか。

今日から東京でも映画館が再開となる。殊にミニシアター系は大変と思うが、彼らが映画ファンにとって最後の砦だから、クラウドファンディングでも何でも良いから、頑張ってもらわねば。

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この記事へのコメント

2020年06月06日 12:12
日本のアニメ食わず嫌いだった私には、これがアニメ初体験的作品になりましたので、アニメへの偏見を取り払ってくれた記念碑的作品になります。
主人公の成長譚ですよね。多少の?も、アニメならOKな利点があるんだなとわかった。
オカピー
2020年06月06日 18:15
nesskoさん、こんにちは。

>これがアニメ初体験的作品になりましたので、

それは意外です。

>多少の?も、アニメならOKな利点があるんだなとわかった。

アニメも舞台も、映画と違って、多少の非現実は許される。そもそもどこの国の人間だか判断できないような人間が多い(笑)。