映画評「アガサ・クリスティー ねじれた家」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年イギリス=アメリカ合作映画 監督ジル・パケ=ブレネール
ネタバレあり

アガサ・クリスティーの映画化は、エルキュール・ポワロものに限る。観光要素があってスペクタクル性が高く、見ばえが良いからである。少なくとも劇場用に映画化されたものはそうである。
 「ねじれた家」は、クリスティーご本人が非常に気に入っている作品ということだが、映画版はそう面白いと言いにくい。

警察関係者を父に持つ若手私立探偵チャールズ・ヘイワード(マックス・アイアンズ)が、外交官時代のカイロで恋人関係であった富豪令嬢ソフィア(ステファニー・マーティンズ)に頼まれ、彼女の祖父の死亡事件(警察は殺人事件とほぼ断定)を調べることになる。
 警察より小回りが利く点を買われたわけだが、その同居者への聞き込みを通して、前妻の姉(グレン・クローズ)を筆頭に、ダンサー上がりの若い後妻(クリスティナ・ヘンドリックス)、長男夫婦、次男夫婦、そして依頼者ソフィアの誰ものが怪しいと判って来る。
 些か頼りない探偵にソフィアの12歳の妹ジョゼフィーン(オナー・ニーフシー)が色々とアドバイスを繰り出す。

というお話だが、私立探偵が出て来ると言って本格ミステリーと思って貰うと困るという内容で、ミステリー寄りのサスペンスと言った方が近い。
 というのも、探偵氏がポワロのような天才ではなく、警察と協力し合う形で進行、映画展開上の立場としては事件解決の為に働くのではなく狂言回しに過ぎないからである。

クリスティーのお気に入りの理由は、前面に押し出してくる、いかにもそれらしい動機が全くのミスリードで、純情な読者や観客をそれに乗せて全く的外れな犯人当てをさせることができると自信があったということではないか。具体的な作品名を言うと犯人が想像できてしまうので伏せることにするが、戦前の本格ミステリーをある程度読んでいる方なら比較的早めに特定できるにちがいない。

舞台は1950年代後半(ロックンロールが流行り始めた頃)の英国で、それらしい文化・風俗が楽しめる一方、勘の良い観客には犯人が特定できる証拠を残し過ぎるという難がある。

家にいるのは構わないが、図書館で借りるしか読む方法がない本ばかりを読んでいる僕には、図書館休館が辛い。貸出・返却のみに限った上で、利用期間を延ばせばさほど三密にはならない。最近濃厚接触の定義が1m以内15分以上の会話(等)に変わったわけで、マスク着用者のみ来館を認め、空気の入れ替えを徹底すれば、大難はないと思うが。まして群馬県は市中感染は殆ど起きていないのだ。

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この記事へのコメント

モカ
2020年04月27日 14:51
こんにちは。

>ねじれた家」は、クリスティーご本人が非常に気に入っている作品ということだが、映画版はそう面白いと言いにくい。

 原作もあんまり面白くなかったです。
 割と最近読みましたがすっかり忘れてますね。印象薄いです。
 子供が犯人でしたっけ??? 子供が手紙の文章を誤解し   て・・・それはエラリー・クイーンですか。
 インスツルメンツを楽器だと解釈して・・・
  話それますが、楽器がマンドリンしかないって、ねぇ。
  レスポールのエレキギターはまだ存在しなかったんでしょう  か(笑) マンドリンで殺人は難しいと思いますね。
  どう考えてもマンドリンが壊れるでしょう。
 
クリスティで印象に残っているのは「春にして君を離れ」
 これは殺人や探偵ものではなくて「人の心もミステリー」のようなお話で、読んだ後に「うぅむ」と腕を組んでわが身を振り返るというシビアなお話でした。 
 中年以降の女性必読 (笑) これを他人事と思えるかたは素晴らしいと思います。 リトマス試験紙のような本です。
 先輩マダムに勧められて読みましたが、読後、リトマス試験紙を突き付けられていた事に気づきました。

もう一つは「終わりなき夜に生れつく」
 読んだのが40年ほど前なので詳細はすっかり忘れていますが、
クリスティらしからぬというか、アイラ・レヴィンやカトリーヌ・アルレー、ちょっと毛色が違いますがトマス・ハーディとかを連想するようなダークテイストだったと思います。

 クリスティは多作なのでつまらないのも結構ありますね。
 ポワロシリーズも本人はあんなには書きたくなかったらしいけど、出版社とのお付き合いやら大人の事情というやつがあったんでしょうね。
 オカピー先生に笑われそうですが、最近まで”エルキュール”が
”ヘラクレス”だとは知りませんでした。 
 名前が洒落だった~
オカピー
2020年04月27日 20:54
モカさん、こんにちは。

>それはエラリー・クイーンですか。
>インスツルメンツを楽器だと解釈して・・・
>話それますが、楽器がマンドリンしかないって、ねぇ。

なぜ壊れやすいマンドリンを殺人に使ったのかも謎の一つでしたね。

>クリスティで印象に残っているのは「春にして君を離れ」
>もう一つは「終わりなき夜に生れつく」

タイトルからしてクリスティらしくない。今年は図書館が有効に使うのが難しいかもしれないので、なかなか読めそうもないです。買えば良い? 今はボンビーなので、節約節約。

>最近まで”エルキュール”が”ヘラクレス”だとは知りませんでした。

ギリシャ神話とローマ神話、そして英語の発音で、同じものが別名であったり似ても似つかぬ発音であったり、日本人にはなかなか難しいですね。アメリカ人はギリシャ神話などろくに知らんと思いますが。
 ジョイスの「ユリシーズ」とギリシャ神話のオデュッセウスが同じとはだれが思うでしょうか?
モカ
2020年04月28日 10:32
こんにちは。

>なぜ壊れやすいマンドリンを殺人に使ったのかも謎の一つでしたね。
 
 あのお屋敷には楽器といえるものはマンドリンしかなかったんじゃないですか? 
クイーンを読んだのも遥か昔なので定かではありませんが、
殺人計画文書?を書いた人間は多分「 ”鈍器”で殴打する」つもりで書いたのに、ちょっとおつむの弱い少年は「 ”楽器”で殴打する」の だと勘違いして「楽器といえばマンドリンがあったぞ!」と、実行してしまったんじゃなかったですか?
ピアノはあったかもしれないけど、ピアノで殺人は多分無理。

マンドリンで人を殺せるなら「赤毛のアン」のアン・シャーリーは殺人者になってるところですよ。 石板が真っ二つに割れる勢いでギルバートの頭をたたいてますから。


クリスティの2作はお時間あれば読んでみてください。
「今月も”オール読物”から軽い殺人事件で50ページの依頼きてるし~」の乗りで書かれたものとは一線を画しています。
 イギリスにもオール読物系の雑誌があったんでしょうね。
 
 図書館
  延滞していてもお咎めメールが来ない代わり、予約物件も滞っていて、困った事です。
 今回の探し物はすんなり出てきて、昨夜から昔懐かしいハヤカワポケットミステリー版の「終りなき夜に生れつく」を再読しだしました。今はもう翻訳者も変わってしまったようです。


> ユリシーズ

  残念ながら私はこの辺り「圏外」です。(泣)
 
浅野佑都
2020年04月28日 14:50
>図書館 三密にならない
僕の地元図書館の場合、予約に限り、施設内の別棟の窓口で受け取れるのですが・・。
群馬県のコロナ関連死亡が14名。3月22日の県内初の犠牲者が出てから1か月余でこの数字ですから、どうみても怖れすぎでしょうね・・。

>アメリカ人はギリシア神話を碌に知らない
知っててもせいぜいローマ神話の神々の名前くらいでしょうね。
高校時代に文通していたカナダのガールスカウトの女学生に、トロイア戦争のギリシア軍総大将だったアガメムノーンのことを尋ねたら、「何それ?かわいい名前ね」という返事でしたよ(笑)カナダでも名門の女学校に在籍していたのですが・・。

ギリシア神話のヘラクレスがローマ神話のハーキュリーズ(英語読み)ですね。
昭和30年代のカナダ製のリミテッドアニメに「マイティハ―キュリー」というのがありまして、プロフェッサーは観なかったと思いますが、僕らアホな”ちびっ子”の間で人気でした。
半人半馬のケンタウロスの少年を相棒に従えるヒーローというのが妙味でした。
その主題歌が、美しい韻を踏んでいて素敵なので、聴いてみてくださいい。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=43&v=NUBgk41vKZA&feature=emb_logo


オカピー
2020年04月28日 20:46
モカさん、こんにちは。

>勘違い

まあ、それが謎解きの答えでしたね。

>マンドリンで人を殺せるなら「赤毛のアン」のアン・シャーリーは
>殺人者になってるところですよ。

へへえ、それは忘れておりましたでですよ。

>図書館
>予約物件も滞っていて

当方、予約も停止中。
 仕方がないので、貸し出し・返却だけしている(既に借りたいものがなくて5年間行っていなかった)山の図書館に急遽行きまして、現代語訳のない近松門左衛門集を借りるという始末。その勘が当たり、その二日後に山の図書館も休館となったので、後は5月7日に開館されるか否かといったところです。群馬県は早くも小中高は5月いっぱいの休校が決まっているので、図書館も右に倣えか? 学校と図書館は違うと思いますがねえ。

>>(ジョイスの)ユリシーズ

色々な文体で綴られる14章において、丸谷才一が、古事記、落窪物語(源氏物語ではなかったような)、井原西鶴、漱石といった各時代の文体風に翻訳しているところが傑作でした。
オカピー
2020年04月28日 20:58
浅野佑都さん、こんにちは。

>群馬県のコロナ関連死亡が14名。

確か一人増えて15人になりましたが、そのうち14人が伊勢崎の施設の高齢者。日本で陽性者数に対して10%を超えるのは群馬県だけではないかと思いますが、とは言っても、かなり弱っている高齢者なので、限られた数におけるこの数値は余り意味を成さないですよね。
 抗体検査の結果が5月上旬に出るでしょう。これで東京の実際の感染者数が凡そ推定でき、日本における致死率も分るでしょうね。

>「マイティハ―キュリー」というのがありまして、
>プロフェッサーは観なかったと思いますが、

真面目に見たかどうかははっきりしませんが、兄貴が例によってテープレコーダーに録音したので、日本語版の歌は歌えますよ。
 ご紹介のYouTubeで聴けたオリジナルと同じメロディーですね。

♪ハーキュリー 力は強く
 ハーキュリー ぼくらの味方
 悪い奴を こらしめて

といった感じでした。
モカ
2020年04月30日 11:46
こんにちは。

当地では今日から突然初夏になってしまいました。

>今はボンビーなので、節約節約。

 エルキュール、文字でみれば、すぐにヘラクレスとわかりますね。 
 フランス語繋がりで「ボンビー」は「bonne vie」と洒落てみてはいかでしょう?
オカピー
2020年04月30日 22:16
モカさん、こんにちは。

>当地では今日から突然初夏になってしまいました。

そうでしたねえ。まだ家の中は比較的涼しいですが、これでコロナが大人しくなると良いですがねえ、暑いだけでは熱中症で病院があっぷあっぷになってしまう。

>エルキュール、文字でみれば、すぐにヘラクレスとわかりますね。

フランス語はHを発音しないので、綴られると印象が変わりますよね。
 
>フランス語繋がりで「ボンビー」は
>「bonne vie」と洒落てみてはいかでしょう?

ボンビーを生き抜く為にも!