一年遅れのベスト10~2019年私的ベスト10発表~

 群馬の山奥に住み、持病もあり、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2019年私的ベスト10は皆様の2018年にほぼ相当する計算でございます。
 スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしており、新作が弱いこともあり、今年は少し古めの作品も入れることになりました。

 2019年鑑賞本数は昨年と同じく361本(3年続けて同じ)、再鑑賞は71本でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品に関しては290本。3年続けて300本を割りましたが、再鑑賞作品が思ったより少ない。しかし、前期24本、後期47本ということを考えると、来年はもっと減る可能性が限りなく大。開局以来ずっと付き合っているWOWOWがYA向けの日本映画に益々注力しているのがその主な原因であります。

 下記の顔ぶれを見れば解るように、ここ数年同様にアメリカ映画系が健闘し、そこに準新作クラスの邦画が加わったような結果。欧州大陸映画が不調に終わったのここ数年の傾向。
 当方と同じ位(約50年)若しくはそれ以上の映画鑑賞歴を持っている方の大半が、僕を含め、“新作映画には期待しない、古い映画を観ている方が良い”と仰ります。技術の進歩に頼って作品傾向が偏ってしまった結果です。困ったものです。

 愚痴はともかく、ラインアップに参りましょう。


1位・・・この世界の片隅に
2016年に話題になって3年もかかってやっと見た邦画アニメ。戦争が庶民にもたらす様々の様相を見せたところが頗る胸を打ちました。序盤ののんびりした様があって初めて効果的にヒロインの絶望が観客の心に迫る。最終的に浮かび上がるのは生命讃歌。ヒロインの動揺する心理を描く部分にアニメならではの効果があったと思います。

2位・・・アクロス・ザ・ユニバース
これはもっと古く2007年の製作。WOWOWにもNHKにも出て来ないのでブルーレイを買って漸く観ました。ビートルズの原曲を大いに生かすアレンジに感動。それによりレノン=マッカートニーの曲の完成度が益々引き立ち、半世紀に及ぶビートルズ・ファン(たる僕)は随喜の涙にむせぶ次第。

3位・・・ロング、ロングバケーション
もはや他人事(ひとごと)ではない年齢になりました。この映画は、末期がんの細君が認知症の元大学教授の夫を道連れに死ぬ話ではない。自分で死を選択するこのできない夫の旅立ちにそう長く命の持たない細君が自らを道連れにする話である。そこを過つと正確な評価が出来ないのであります。実は唯一の純粋大陸欧州映画なのですが、舞台がアメリカ、出演者が英米人なので、純然たる大陸欧州映画とは言い難い。残念でした。

4位・・・この空の花 長岡花火物語
2012年製作だからこれもまた新作と言えないが、圧倒されました。大林宣彦監督の反戦への強い思いが時にセミ・ドキュメンタリー的にもなるファンタジーとして結実、物凄いパワーに言葉を失いましたね。これが戦争三部作の第一作に当たりますが、その後の二作より僕は気に入りました。

5位・・・否定と肯定
ホロコースト絡みの作品が些か作られ過ぎている現状は、ユダヤ人団体が作らせているような疑惑が浮かんで逆効果と思われます。しかし、この作品はホロコーストに関する研究をテーマにしながら、取り上げるのは表現の自由(何でも許されるのか否か)という問題。ネットで嘘が跋扈する時代にあって作られるべき作品として大いに評価しました。

6位・・・ワンダー 君は太陽
生れついての性格というのもないではないですが、子供はやはり親次第という感を強くしますねえ。観た時はスーパーに素晴らしいと思えた作品ですが、既にその時に予想したようにベスト10の上位に食い込むことはできませんでした。時間が経つと印象が薄くなってしまうタイプの感動作。

7位・・・判決、ふたつの希望
中近東出身者として今一番実力のあるアスガー・ファルハディの諸作に比べ、人間劇としては厳しさが徹底されない憾みがあるものの、レバノンにおける民族問題を扱って実に興味深かった。

8位・・・ゲティ家の身代金
実際に起きた営利誘拐事件の顛末を描くサスペンス。今回選んだ中では比較的娯楽性の高い作品と言えるとは雖も、純サスペンスではないので、お金への愛と肉親への愛が対決するドラマとして見たほうが寧ろ楽しめますよ。

9位・・・しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
伝記映画ですが、ドラマ映画としての側面が強い。仲が良いのか悪いのか判然としないような不器用な夫婦の絆。老夫婦はかくあれかし。

10位・・・万引き家族
ここ暫くのカンヌはこの手のセミ・ドキュメンタリーを好むので、パルムドール受賞と相成りました。しかし、是枝裕和監督は今や僕のご贔屓監督だから、この映画くらいでは寧ろ感心できません。同じグループに入るであろう「誰も知らない」より落ち、「そして父になる」よりは上出来という感じです。しかし、現在の日本を色々と切り取って説得力があり、随所に巧さが見られます。

次点・・・マンチェスター・バイ・ザ・シー

画像

ワースト・・・リベンジgirl
ご承知のように、ワースト=一番出来の悪い作品、とは限りませぬ。それを言ったら多分別の作品になるでありましょう。この映画のダメなところは、性格以外は完璧という秀才女性のお話の筈なのに、ヒロインが程度の低い行動ばかりすること。どこが“性格以外は完璧”なんじゃい(笑)。


****テキトーに選んだ各部門賞****

監督賞・・・大林宣彦~「この空の花 長岡花火物語」「野のなななのか」「花筐/HANAGATAMI
男優賞・・・ケイシー・アフレック~「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
女優賞・・・のん~「この世界の片隅に」(声優としてですが)
脚本賞・・・スティーヴン・チョボウスキー~「ワンダー 君は太陽」
撮影賞・・・ジョディ・リー・ライプス~「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(該当作なしと思うも、寂寥たる風景が胸を打ったので)
音楽賞・・・ジョン・レノン、ポール・マッカートニー~「アクロス・ザ・ユニバース」(反則ですが)
特別賞・・・京都アニメーションの亡くなられた方々

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この記事へのコメント

2020年01月17日 09:52
3、4、5、9位は見ていません。
「アクロス・ザ・ユニバース」は、いいですねえ。音楽がいいのはもちろん、イマジネーションも素晴らしくて、数回、映画館に行きましたもの。
「この世界の片隅に」は世評もすごかったですが、私はピンと来ず、もしかして自分のほうが感じ方がおかしいのか?(なんて思いません)
「この空の花~」は公開時、友人にお勧めされたのですが、私は自分が見る気にならないと見ないので、見逃しました。
「否定と肯定」は興味はありましたが、単館系の上映だったのか、見逃しました。最近はシネコンのほうが楽なので…。
見逃したといっても、WOWOWなどで見ればいいのですけどね!
オカピー
2020年01月17日 21:00
ぼーさん、こんにちは。

>「アクロス・ザ・ユニバース」
新作でしたら1位にしましたが、10年以上前なので、同じ星を進呈した「この世界の片隅に」を1位にしました。勿体ないのでまだ一回しか見ていません(良い作品は却って繰り返して観られない僕です)。

>「この世界の片隅に」
肌に合う・合わないというのはやはりあるのですよねえ。
 この作品の片渕須直監督の旧作「マイマイ新子と千年の魔法」は全く無視されましたが、僕は高く評価しました。だから、僕が高く評価したのは世評とは関係ないのです。僅かの差異で結果が大違い。ある意味残酷です。

>シネコン
僕は年を取り、シネコンにかかるような映画に殆ど食指を動かされなくなりましたね。マーヴェル・コミックスの映画版など実際に観ると面白いのが多いのですが、その気になりません。
 とにかくこの類が作られ過ぎて、完全に供給過剰によるデフレ状態です。もし適度の頻度で公開されていたら、かつての「ダークナイト」のように1本くらいは入れたくなるはずなのですが。
浅野佑都
2020年01月17日 22:33
 今年は(というか今年も)突出した作品が少なかったですね。数年前なら、ベスト10に2本くらい入ることもあった韓国映画も、最近の傾向は低空飛行でしょう。
邦画が3本(内、アニメ1本)入りましたが、相対的に他の作品よりは良かった、というのもあると思いますね・・。

>良い作品は、勿体なくて頻繁に観ない感動が薄れるような恐怖感(笑)がありますねぇ・・実際、薄れることもありますが、新しい発見もまたあり・・。

>「この世界の片隅に」
いや、これはちょっとしたエポックかもしれません・・。
というのは、僕がプロフェッサーのブログにお邪魔するようになってから7年くらいだと思いますが、その間、アニメ作品が年度1位になったのは記憶にありません・・。

僕はこう見えて(どう見えるのか笑)アニメオタクはともかく、職場の3,40代の若手ともアニメや漫画の話題で居酒屋で話せるくらいの知識があり(笑)ちょっと前の作品でも「進撃の巨人」~「魔法少女まどかマギカ」に至るまで、結構な数の作品を観ており、自分ではむしろアニメに対しての方が目が強いとさえ・・(もちろん「マイマイ信子・・」は感動しました)

その僕をして・・この結果には驚くとともに、「これで本当に良いのか」という思いもありますね・・。
建前的には、内外の、リキの入った実写映画が、名作の誉れ高いとはいえアニメに負けるようでは困るわけですが、それ以上に、やはり僕の中でも、映画評論家の渡辺祥子みたいに、アニメに対する偏見ともいえない微妙な差別意識があったことにまざまざと気づかされたわけです・・。
(渡辺サッチーは、女淀長さんとでも言うべき重鎮で好きな評論家ですが、アニメは基本、デイズニーとジブリしか観ません)

自分もアカデミー賞みたいに、アニメはアニメ部門として括っていたことに対する反省とともに、以前から感じていたプロフェッサーの”何でも平等に見る姿勢”に感じ入った次第です。
個人的に、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」が上位に来るかな、と思いましたが・・。
オカピー
2020年01月18日 18:11
浅野佑都さん、こんにちは。

>韓国映画も
2010年代に入って僕は韓国大衆映画を観なくなりましたねえ。
 純文学系は依然馬力がありますが、見られる本数が少ない。キム・ギドクにかつての精彩がなくなり、今年はポン・ジュノの作品がWOWOWに出るのではないかと期待していますが。

>いや、これはちょっとしたエポックかもしれません・・。
アニメも3年に一度くらいはベスト10に入って来ますが、さすがにベスト1となるとなかなか。フランス製「イリュージョニスト」という作品が3位だったかなあ。あの年の1位は「プッチーニの愛人」という傑作ですが変な作品でした。

>渡辺祥子・・・アニメは基本、デイズニーとジブリしか観ません
割合若くして亡くなった筈見有弘氏の奥さん。“スクリーン”を買い始めた時からもう執筆者でした。大ベテランになりましたなあ。
 僕も“劇場版”の類は見ませんが、洋画のアニメはディズニー以外にも見ます、と言いますか、ディズニー本社の作品は世評ほど良いとは思わないのですよ。

>プロフェッサーの”何でも平等に見る姿勢”に感じ入った次第
どうもです。
 確かに実写とアニメを同じ土俵で比べるのは難しい場合もありますが、結局作者の言いたいことをうまく表現できているかどうかを計れば良いので、不可能ではないと思いますねえ。

>「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
ご明察通り僕の好みです。3位以下はさほど差がないので、この作品が3~6位に入っても不思議ではない感じ。圏外にした代わりに、男優賞と撮影賞を進呈しました。