映画評「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・西浦正記
ネタバレあり

TVドラマは40年くらい前から殆ど観ず、現在では、ながらで見る「相棒」以外は全く無縁。従って「劇場版」とあるものも「相棒」を別にすると全く避けるのだが、2018年一番ヒットした邦画+完全ノーカットという新聞欄のキャッチコピーに釣られて観ることにした。洋画もTV化現象と見なすことのできるシリーズものが当たっていることを考えると、今や映画を観るのはTVファンということになりそうだ。

タイトル通りヘリで事故現場などに駆け付ける救命センターのフライト・ドクターたちのお話で、冷たい口調で話すが実は人の良い脳外科・山下智久、彼とは対照的な性格で同僚のフライト・ナース比嘉愛未との結婚を控えている整形外科・浅利陽介、口が悪いが実は人情家の産婦人科・戸田恵梨香、彼女とルームシェアしている穏和な救急医学専門・新垣結衣が、次々と難しい局面を迎え、首尾よく対処していく。

例えば、遭難で負った以上に末期がんで余命の少ない女性患者の結婚問題。同じく結婚式を控えている浅利との絡みでTV的に“良い話”に仕立てられている。或いは、脳死状態になった14歳の少年の臓器提供について両親がどうするかという問題。こちらは椎名桔平のセンター部長が処理する。

その中でハイライトと言って良いのは、中盤のフェリーの衝突事故でバーが体を突き破った負傷者を山下が難しい処置をして救う場面。これには親子の確執が複雑に絡み、ナースの馬場ふみかのアル中の母親との不和、或いは山下の過去を交え、親子の微妙にして、容易に切ることのできない絆の問題が通奏低音的に扱われている。
 先述した結婚も家族というテーマに絡められなくもなく、家族の問題と生死の問題が前面に出てくれば、涙腺を刺激される人も少なくないだろう、とは思う。家族の絡むCMを見て涙を流すような人間である僕も例外ではない。

しかし、良い映画かと問われれば、否と答えざるを得ない。お話の面では、色々なエピソードが同時進行的に綴られ、通奏低音こそあるがまとまりを欠く。求心力のある一つのエピソードを用意し、それにまとわりつくように他の挿話をちりばめる構成の方が、少なくともTV版を見ていない人には手応えを感じるはずである。結婚式以降のエピソードは明らかにTVを見て来た方々への見せ方につき一々冗長で、ぐっと整理できる。
 冗長と言えば、父親と確執のある訳あり息子が父親の手術を決定するフェリーの場面にも当てはまる。意味のない長さとも言い切れないが、死ぬか生きるかの瀬戸際というサスペンスフルな場面だけにイライラさせられる。僕は長すぎると断言したい。

純粋な演出(タッチ)については、トロント医学大学から帰った山下医師が降り立つ時にスローモーションを使う辺り極めてTV的。少なくとも映画文法的にスローを使う必然性がなく、まだるっこいだけ。早く見せろってなもんである。監督が構図に全く関心を見せない画面に面白味なく、総じてTV的に腰が弱い。

ジャンルは【サスペンス】にしようかと思ったが、【ドラマ】に分類する。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2019年12月13日 14:31
 作品を観ずにコメントをすることは僕の主義に反しますが、ここでは一般論的に書くことをお許しください・・。

この作品に限らず、テレビドラマを全く見ない僕は、伝え聞く評判で判断するしかありませんが、例えば、この映画と似たような医師もので、「Dr.X」などは、ヒロインの米倉涼子はスタイル抜群の妙齢美人で
声も男性的な感じで頼りがいもある・・。
しかし、だからこそ、意外性に欠けて絵的に弱いのに、TV局は、今度は同じタイプの天海祐希を起用して二匹目の泥鰌狙いだとか・・。・・。

刑事コロンボは、風采の上がらない小男のコロンボ警部が(犯罪都市ロスの警部という時点で、実はやり手なのは想像がつくわけですが‥)豪華な生活をする上流階級の犯人の殺しを暴くことに凄味があったわけです。
また、手塚治虫の「ブラックジャック」にも、眉毛一つ動かさずに完璧なメス捌きをする女医が登場しますが、容姿的にはどこにでもいる清楚な女性として描かれていて、彼女が白衣を着てメスを握った瞬間にガラッと雰囲気が一変するのは(手塚の画力もありますが)目を見張ります・・。


このドクターヘリシリーズは、美男美女の俳優たちが医者ごっごをしているとしか見えません(なかで、山下智久は表情があまり動かないのでクールな医師役は適正)。

個人的に、前橋にある済生会病院の女性外科医を知っていますが、がんなど難易度の高い手術では8時間を超えることもざらで、体力勝負の仕事でもあり、疲労で手術室で倒れた医師が出るとすぐに代わりの医師が入り、倒れた者はそのまま自力で起き上がるまで床にほっておかれます。
まさに、死屍累々の戦場とでもいうべきではないでしょうか。
ドラマでは、そのへんの過酷さをいかに”らしく”見せるかに腐心してもらいたいわけですが、総じて日本のテレビドラマはそうなってはいませんね。

僕は、数年前から外国TVドラマシリーズを観ていますが、ビリー・ボブ・ソーントン主演の「ファーゴ」などは、映画版に勝るとも劣らない出来栄えで舌を巻きました。

日本も、単発的にはよいドラマを制作できる潜在能力はまだまだ高いのでしょうが、映画版にして後から稼げるという悪しき慣習が、大いに足を引っ張っていると思いますねぇ・・。
オカピー
2019年12月13日 21:49
浅野佑都さん、こんにちは。

>「Dr.X」
昔は刑事ドラマと時代劇ばかりが目立つジャンル系ですが、最近は医療ドラマが人気のようですね。一昔前にアメリカで医療ものが流行って日本でも放映された影響でしょうねえ。
 時代劇はTVでも目立たなくなりました。そもそも団塊の世代は時代劇を見ないでしょう。

>美男美女の俳優たちが医者ごっご
あはは。少し揃えすぎ。
 しかし、新垣結衣が医者なら病気でなくても通院しますよ。彼女は医者ではないようですがね^^

>そのへんの過酷さをいかに”らしく”見せるか
日本のドラマは仕事ではなく、情を描くことに傾きすぎますね。そういうのを好む人が多いからでしょうが。

>数年前から外国TVドラマシリーズを観ています
僕も、どちらかを選べと言われれば、外国のドラマを選びますね。最近こちらにはご無沙汰のvivajijiさんも高く評価することがあったように思います。

>単発的にはよいドラマを制作できる潜在能力はまだまだ高い
そう思うし、願います。