映画評「エンジェル、見えない恋人」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年ベルギー映画 監督ハリー・クレフェン
ネタバレあり

オー・ヘンリーの名短編「賢者の贈り物」を少し思い出させる捻った寓話恋愛劇で、監督はベルギーの若手ハリー・クレフェン。製作を担当したジャコ・ヴァン・ドルメルがいかにも好む内容と言うべし。

夫が消失マジックを得意とする魔術師だった母親エリナ・レヴェンソンがその失踪後透明な子供を産んでエンジェルと名付ける。
 彼女はずっと病んでいるのだが、僕はいもしない子供の存在を訴えた為に一種の精神病院に閉じ込められているのかと思ったし、実際そうなのかもしれない。それに関わる描写は最小限なので不明のまま。

とにかく、エンジェルは透明人間ながら存在し、隣に住む盲目の美少女マドレーヌ(幼少時代ハンナ・ブードロー、ティーンエイジャー時代マヤ・ドリー、成人後フルール・ジェフリエ)と相思相愛の関係になるが、彼女は十代の時に視力回復の為に渡米することになる。
 「賢者の贈り物」は、妻が髪を切って夫の時計の為の鎖を買うが、夫は妻の髪の為にくしを買う為に時計を売り、共に無駄になるというお話。主題は相手を思いやる愛情が何よりも大事であるということだが、本作には、マドレーヌに視力がない為に姿が見えないのを引け目に感じる少年が彼女と付き合えるという前半の設定に、持たないことがプラスに働くという、「賢者の贈り物」とは逆の意味を成す仕掛けを感じるわけである。

後半はいよいよ視力を得た彼女に対して引け目を感じる彼がどう振舞うか、というサスペンス(笑)。サスペンスと言うと大げさだが、彼の心理を慮ればそうであろうし、実際彼は時間をかけて自分が透明人間であることを知らせ、その危惧した通り彼女は大ショックを受ける。しかし、目の見えない時代に覚えた愛情にはそれを乗り越えさせるものがあるのである。

純愛の寓意と言うほかあるまい。だから、へその緒がどうのこうの食べた食糧がどうのこうの寒くても服を着ないのか云々という科学的アングルからの文句は戯言であると一蹴できる。何となれば、透明人間であること自体が非科学的なのであるから、それ以外の部分を科学の常識で埋め尽くしても仕方がないだろう(サスペンス醸成の為にそういう風にアプローチする作品が多いが、しなくても問題がないのは自明)。常識があればそれくらい解るはずである。

80分に満たない小品。多分このお話ではそれ以上長いと退屈するにちがいないが、その短い上映時間のうちに、一人の人物を演じる三人の美少女を豊富な自然描写の中に見るだけでも至福と言って良いのではないか。そもそも父親が消失マジックが得意だったので子供が透明人間に生まれたと解釈できるのも洒落っ気たっぷりでござる。

昔トラフィックというグループが Dear Mr. Fantasy という曲を歌っていましたね。本作とは全然関係ないけど。

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この記事へのコメント

モカ
2019年12月01日 14:56

こんにちは。

トラフィックのレコードが確か1枚あったはずだとソワソワしだしました。
ベージュの地に黒で野菜か花の束が描いてるやつ。売っぱらってなければまだあるはずで・・・こういう事で無駄なのか有意義なのかわからない時間を費やしてしまいます。「性分でんねん」ってやつですね。
オカピー先生ならこの感じわかってもらえますよね(笑)
オカピー
2019年12月01日 22:44
モカさん、こんにちは。

>ベージュの地に黒で野菜か花の束が描いてるやつ。

ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイとかいいましたっけね。これはアナログ盤で持っていますよ。B面は殆ど憶えていませんけど。


>こういう事で無駄なのか有意義なのかわからない時間を費やして
>オカピー先生ならこの感じわかってもらえますよね(笑)

僕もしょっしゅうやっていますよ。何か思い出すと、それを探すのに時間を使ってしまう。色々と忙しいのに。
この間観た映画の中に「第七天国」というサイレント映画が出て来たので探しましたが、見つからず。
こういう無駄を楽しめるのが本当の余裕と言っていた人がいましたっけ。