映画評「エアポート'75」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1974年アメリカ映画 監督ジャック・スマイト
ネタバレあり

1970年の「大空港」の続編。恐らく「ポセイドン・アドベンチャー」のヒットに俄かに湧き上がったパニック映画ブームに乗じた為に内容をパニック重点に転換し、舞台は空港ではなく飛行機内に変わった。そんなわけで題名はちと変だが、パニック映画として十二分に及第点の面白さがある。まだ十代半ばだった頃に観て以来の久々の再鑑賞ですよん。

大型旅客機パイロットのチャールトン・ヘストンとの長年の愛人関係に嫌気がさしてきたスチュワーデス、カレン・ブラックの乗るロサンゼルス行きボーイング747が濃霧の為にソルトレークに急遽着陸空港を変え高度を下げた為、病気で正体を失くしたダナ・アンドリューズの操縦するセスナ機に衝突されて操縦席一部を破損、副操縦士は外に吸い出され、機関士は即死、機長エフレム・ジンバリストJrは重態、操縦できる者が誰もいなくなる。
 スチュワーデスの中でベテランで最も気丈なカレンが無線を通して副社長ジョージ・ケネディやヘストンの指示を仰いで、自動操縦を駆使してパイロット補充まで時間稼ぎをするのだが、衝突するのを避ける為に高い技術が必要な富士山級の高さの山脈が近づいて来る。そんな時に無線も壊れてしまう。

素人に操縦させるのが開巻後40分から40分ほど続く本作最大の見せ場で、空軍パイロットが空いた穴から操縦室に入ろうと悪戦苦闘するサスペンスが続く。

ドラマ性を求めなければこの映画は相当面白い。設定がシンプルだからこそ骨太で根源的なサスペンスが味わえるのである。Allcinemaに同様のコメントがあるように、テロだの何だの余分な要素や小細工は要らないどころか、寧ろ邪魔になる。飛行する機体が本物なのも迫力に貢献する。どんなに進歩してもCGは結局本物に及ばない。この映画はこの二点に尽きるのではないか。

本格的ではないが群像劇を成すメンバーは、腎臓移植の少女リンダ・ブレア、サイレント時代からの大女優グロリア・スワンスン(本人役)、副社長夫人スーザン・クラーク、アル中気味の老夫人マーナ・ロイ、歌の上手い尼僧ヘレン・レディ(「私は女」を歌ったらどうしようかと思った)。当時75歳のスワンスンの若々しさに驚く。男性脇役陣はロイ・シネスを筆頭に印象が薄い。

演技としてはカレン・ブラックが断然の熱演。演技派だったが意外と早く実力の発揮しようのない脇役に甘んじるようになった。いつものことだが、チャールトン・ヘストンほどこういうスペクタクルに欠かせないと思わせる男優はいない。全米ライフル協会会長としての言動は好かないが、俳優としては稀有な存在だった。

実は「エクソシスト」を見ようとハイビジョンのライブラリーを当たっていたら遂に見つからず、たまたま出て来た本作にしたのだ。偶然にもリンダ・ブレアが出演していた。すっかり忘れていたのであった。どちらも1974年の製作ではあるし、実に面白い。それにしても「エクソシスト」はどこへ行った?

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この記事へのコメント

蟷螂の斧
2019年11月25日 19:07
こんばんは。

>セスナ機に衝突されて操縦席一部を破損、副操縦士は外に吸い出され、機関士は即死

アイデア賞!?

>ベテランで最も気丈なカレン

やりますねー(拍手!)

>前の3作でプロコル・ハルムの影響

その後、ユーミンは発展した訳ですね。

>銀行の営業ウーマンの両親が共に自分より若い

The Times They Are a-Changin'

>「晩夏」の♪空色は水色に 茜は紅に、という辺り歌詞における進境

そうなんです。そして銀河テレビ小説「幻のぶどう園」。蔵出しして欲しいけど映像は残ってないかも知れません・・・(涙)。
オカピー
2019年11月25日 19:51
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>アイデア賞!?
科学的には、ありえないという人も多いですが、そういう考えはちとつまらない^^

>その後、ユーミンは発展した訳ですね。
おおっ、僕の文章を応用してくれましたね。有難いです。

>蔵出しして欲しいけど映像は残ってないかも知れません・・・(涙)。
そうかもしれませんねえ。
 また別の理由があり、映画と違ってTVはエキストラを含めて(!)出演者全員の許可がいるので、出演者の多い学園ドラマなどではビデオ化がなかなかできないようです。
蟷螂の斧
2019年11月26日 07:48
おはようおざいます。

>大女優グロリア・スワンスン

『サンセット大通り』を名古屋の映画館で見た時の感激は今でも忘れられません!同時上映は『雨に唄えば』。

>出演者の多い学園ドラマなどではビデオ化がなかなかできないようです。

「飛び出せ!青春」とか「ゆうひが丘の総理大臣」とかもそうですか?

>カレン・ブラック

父は児童文学作家、祖父はシカゴ交響楽団のバイオリニスト。中々優秀な血筋ですね~!

さて、雨の降りそうな中、自転車出勤です。
それよりも長女の大学受験等でかかる金の問題が大変です!
オカピー
2019年11月26日 19:45
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>『サンセット大通り』を名古屋の映画館で見た時の感激は
>今でも忘れられません!同時上映は『雨に唄えば』。

凄い組み合わせですね。
「サンセット大通り」圧倒的な映画でした。往年の大監督シュトロハイムがかつて名監督だった召使役で出て来る辺りは捻りでもあり、涙を禁じ得ない感じにもなりましたねえ。
 ビリー・ワイルダーはやはり往年の名女優を主人公にした「悲愁」を晩年に作っていて、これも大傑作ですが、昨今はなかなか観られないようです。TVにも出たことがないような気がします。僕は感激し、映画館で二度観ました。


>「飛び出せ!青春」とか「ゆうひが丘の総理大臣」とかもそうですか?

多分。
だから登場人物が限定されている場面であれば問題なく、部分的に出すことはできるでしょうが、再放送すらハードルが高いようですよ。
ましてビデオ化は。

僕は長い著作権に反対の立場でして、TPPで自動的に著作権がアメリカと同じ70年になると聞いて、調べるうちにそういう情報に当たったわけです。TPPをアメリカが抜けても結局70年になりましたが。
 最悪の場合は、メキシコの100年に合わせるという話もあったようですが、長い著作権保護は百害あって一利なし。個人の場合死後20年でよろしい。映画の場合は製作後50年くらいが理想でしょうか。日本の裁判所は、チャップリンと黒澤明に限って個人の著作権を認めましたが、他の監督を馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたい。


>>カレン・ブラック
>父は児童文学作家、祖父はシカゴ交響楽団のバイオリニスト。
>中々優秀な血筋ですね~!

気持ちがブラックになったところで話題転換。
素晴らしいですねえ。もしかしたら良い脚本が書けるかもしれません。


>さて、雨の降りそうな中、自転車出勤です。
>それよりも長女の大学受験等でかかる金の問題が大変です!

お父さんはつらいよ、ですね。子供はそれを当たり前と思いがちなので、益々つらいです。その場合は井上陽水の「人生が二度あれば」を聞かせて説教しましょう。気を付けて仕事なさってください。