映画評「オフィーリア」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年イギリス=アメリカ合作映画 監督クレア・マッカーシー
ネタバレあり

ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇の一つ「ハムレット」をオフェーリア(オフィーリア)の視座で捉えたリサ・クラインの小説を映画化した作品である。パスティーシュ、二次創作と言うべし。今回のWOWOW放映が本邦初紹介。

物語は、以前書いた英国映画「ハムレット」(1948年)の梗概をほぼそのまま転載しておこう。

中世デンマークの王子ハムレット(ジョージ・マッケイ)は、父王を毒殺して母ガートルード(ナオミ・ワッツ)を后に迎え王位を継承した叔父クローディアス(クライヴ・オーウェン)に復讐せんと発狂したふりをして機会を探るが、その間に挟まれた忠臣ポロニウスを誤って殺したことから、愛するオフィーリア(デイジー・リドリー)を発狂死に追い込み、彼の息子レアティーズ(トム・フェルトン)の復讐対象にもなって、大惨事に発展する。

この骨格部分は外見的には原作と同じなのだが、オフィーリアの発狂はハムレット同様演技であるし、死も偽装である。そこで出て来るのが「ロミオとジュリエット」式の毒で、その為にクローディアスにひどい目に遭わされたガートルードの姉マチルド(ナオミ・ワッツ二役)が新たに加えられ、一種フェミニズム映画的な構図を成す。
 マチルドは毒に詳しく、クローディアスの子供を妊娠した為に殺されそうになったところを死んだように見せかけ蘇り、姉とは秘薬を授けることで交渉を保っている。男性VS女性の構図が明確である。
 殺された先王の亡霊を王子ハムレットより先にオフィーリアが見るのも、フェミニズムの発露と言えようか。

有名な台詞も別の解釈が示される。例えば、「尼寺(修道院)へ行け」も発狂を装ったハムレットが示し合わせてオフェーリアに「逃げろ」と具体的に指示したことになっているなどなかなか面白い。
 Wikipediaによると、原作と細かなお話や台詞が変えられていることを【ガーディアン】紙が批判したそうだが、主題が女性映画的に変えられている以上問題ではない。シェイクスピアの映画化なら問題かもしれないが。

フェミニズムの傾向も極端ではなく、程々楽しめる。

この手は原作を知らないと余り楽しめないのでござるよ。皆さん、教養を積みましょう。

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この記事へのコメント

モカ
2019年11月20日 21:42
こんにちは。

>パスティーシュ、二次創作と言うべし

 面白そうですね。二次創作と言えるのかどうかわかりませんが、
「ジェイン・エア」に出てくるロチェスター氏の妻(閉じ込められた狂女)の側からクレオールをテーマに書かれた「サルガッソーの広い海」、 「若草物語」では存在感のなかった父親の若かりし頃を描いた「マーチ家の父 もうひとつの若草物語」などは面白かったです。


 さて、「オフィーリア」といえば、ザ・バンドのナンバーが一番に思いつく今日この頃ですが、一応小学校の時に子供用にリライトされた「ハムレット」は読んでました。

 物持ちの良い親のおかげで、偕成社 少女世界文学全集 第2巻「ハムレット ベニスの商人」昭和38年 定価250円也が手元にございます。ちなみにリライトされているのは森三千代さんです。
 ちょっと読んでみました。久しぶり~ 
 面白いですね~ この頃は小学生がこんなの読んでたんだ~

例のところがどんな感じか興味ありませんか?
お教えしましょう。

「お嬢さん。父親を家のなかにとじこめたら、あんたは尼寺へいきなさい。尼寺よりいいところは、どこへいったってありゃしない。尼寺へいけば、あんたは、その美しさと、純潔を、うしなわないでいられるのだ。わかりましたか」

 どうです? 苦労のあとが伺われますね・・・
 それにしても、道を尋ねられて教えているおっさんみたいな口調ですね(笑)
 
オカピー
2019年11月21日 15:21
モカさん、こんにちは。

>面白そうですね。
主役の役者がやや弱体ですし、捻りも足りませんが、この手の二次創作は嫌いではないので、甘めに。

>「サルガッソーの広い海」
今回の趣向と似た発想みたいですね。

>「マーチ家の父 もうひとつの若草物語」などは面白かったです。
ふーん、色々あるんだなあ。

>「オフィーリア」といえば、ザ・バンドのナンバー
調べてみたら「南十字星」収録ですね。このアルバムはタイトルは知っていれど持っていないので、知りませなんだ。いずれ買いたい。

>偕成社 少女世界文学全集 第2巻「ハムレット ベニスの商人」
へぇ~、良い親御さんだ。
昭和38年で250円というと結構な値段ですねぇ。益々偉い^^

>面白いですね~ この頃は小学生がこんなの読んでたんだ~
最近の日本人はナショナリズムで、映画は日本映画、読むのは日本のコミックかよくてライトノベル。僕らの頃と違って海外への傾倒が少ない感じがします。

>それにしても、道を尋ねられて教えているおっさんみたいな口調ですね
最後の“わかりましたか”がそのダメ押しですね^^;



モカ
2019年11月21日 18:06
こんにちは。

子供の本が250円。 結構高いですね。
明治サイコロキャラメルが5円から10円に値上がりしたのがいつだったか・・・? 10円としても25個も買えたのか・・・
もうちょっと後ですが、ビートルズのシングルレコードが370円。
この頃は所得倍増でインフレだったから貨幣価値がどんどん変わってますね。
本の値段は変わりましが、レコードはあまり変ってません。
映画も子供が50円とかでしたか? って知りませんよね。(笑)

この少女世界文学全集は監修が川端康成 村岡花子 山室静 と書いてあります。 時代を感じますね。
このシリーズは30巻ぐらいまでは読みましたが、そのあたりで中学生になったので、さすがにリライト物は読まなくなりました。

次の第3巻がハドソンの「緑の館」。オードリーのあれですね。
他にも「制服の処女」とか「母の曲」(ステラ・ダラス)
「クオ バディス」
ツヴァイクの「マリー・アントワネット」 
古色蒼然? 渋いとも言えますか? 映画化作品が多いですね。
もちろん、アンやあしながおじさん、パレアナのような女の子向けのもありましたが。(アンもあしながおじさんも児童書扱いされてますけど、子供向けに書かれた本ではないんですけどね)

岩波や福音館からは、もうちょっと洒落たのが出ていました。
ケストナーやメアリー・ポピンズや・・・忘れましたが。

戦争末期、翻訳本など読めなかった反動で戦後、児童書の分野にまで翻訳本ブームが押し寄せたんじゃないでしょうか。
特に児童書の分野は「欲しがりません勝つまでは」とか「兵隊さん、ありがとう」的なものしかなかったんじゃないかな・・

村岡花子も国防婦人会に入ってましたしね。


国産品愛用はナショナリズムなんですかね?
洋楽もひところのようには流行らないみたいだし。

ザ・バンド「南十字星」 良いですよ。 ぜひ聴いてください。
バンドがボブ・ディランとビッグピンクの地下室でセッションしていた頃に、ディランが飼えないからとバンドにあげた犬の名前が「ハムレット」でした。「オフィーリア」と関係はないと思いますが。











オカピー
2019年11月21日 21:19
モカさん、こんにちは。

>この頃は所得倍増でインフレだったから

小学3,4年の時80円だったラーメンが5,6年後高校生の時には400円くらいになっていましたものねえ。それ以降そう極端には上がっていませんね。


>(アンもあしながおじさんも児童書扱いされてますけど、
>子供向けに書かれた本ではないんですけどね)

「緑の館」も違いますよね。オードリーは綺麗だったけれど、映画はダメでした。


>国産品愛用はナショナリズムなんですかね?

文化的ナショナリズムと僕が勝手に名付けているものですけど、江戸末期から昭和まで続いて外国、舶来への憧れというか呪縛から解き放たれたと言っても良いでしょうか。
 結果的に日本のものを聞いたり、読んだり、見たりする。それはそれで良いですが、外国を余り知らないと“井の中の蛙”になる。
 実際日本は色々なところで世界から落伍している分野が多く、その焦りがTVの“日本凄い”系列の番組になったり、形を変えて嫌韓本などになったりする。


>ザ・バンド「南十字星」 良いですよ。 ぜひ聴いてください。

すぐにはないですが、聴けそうです。


>ディランが飼えないからとバンドにあげた犬の名前が「ハムレット」

そりゃ面白い^^