映画評「ピンクとグレー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

今年は久しぶりに再鑑賞作品が100本を超えるのではないかという気がしている。というのも主な鑑賞ソースであるWOWOWが青春コミックの映画化やジャニーズ事務所所属芸能人の主演作品を多くやり、これらは大概避けるからである。青春コミックは棺桶に片足をつっこみかけている初老にはどうでも良い感じが強いし、ジャニーズ芸能人が主演する作品の大半はそもそも彼らを起用する時点でミーハー的な若者をターゲットにしていると思われ食指が動かない。彼らの演技力その他が問題なのではない。作品傾向が近年のわが守備範囲から外れるということである。

本作は監督が大体見ることにしている行定勲なので3年前に録画したものの、加藤シゲアキという芸能人が書いた小説の映画化と知って観る気が失せて放置してしまった。結果的にはもっと早く観ておいても良かったと思われる出来栄えで、原作から大きく内容・構成を変えたところが面白味となった要因らしい。

9歳の時に関西から埼玉に越してきた河田大貴(菅田将暉)は同じ学校に通う鈴木真吾(中島裕翔)と石川紗理(夏帆)と親友になる。高校時代に真吾の姉がダンス公演中に墜落死する(後段を見る限り自殺と考えられる)。
 男二人は東京で読者モデルにスカウトされてそのまま芸能界入り、特に真吾は白木蓮吾の芸名で人気者になっていく。紗理と同居を始めた大貴(原作では真吾が恋人になるらしい)は成功を目指すが、蓮吾こと真吾由縁の仕事を貰うことを嫌った為に一向に芽が出ず、真吾とも縁を切る。
 暫くして同窓会で再会した真吾は大貴に“一日でお前を人気者にする”と約束、翌日首つり自殺を遂げる。

上映時間の真ん中あたりで主演と思われる中島裕翔が消えるのはおかしいなあと思う間もなく、これが実は大貴が書いた自伝小説の映画と判明する。それ自体は今となっては珍しいと言えない趣向であるが、面白いのは本当の大貴(中島二役)が映画の中で真吾を演じているという捻りである。中島裕翔という主役男優が一人二役を演じると同時に、二人一役である鈴木真吾(本当の真吾は柳楽優弥が演じている、死後登場するので殆ど動く場面なし)というキャラクターを演じている点が実に珍しく興味深いわけである。

醜さも絡んでくる現実の世界はモノクロで表現される。大貴は人気者になった真吾を目標にしつつ、その余沢にあずかるのを潔しとしない一方で、知らず彼の模倣をしようとしている。その辺を共演俳優(菅田二役)や紗理(本物は岸井ゆきの)に指摘されイライラする。真吾の母(宮崎美子)から8mmビデオを渡され、真吾が死んだ姉に憧れ以上のものを覚えていたらしいことを知った大貴が首つり自殺の真似事をすると、大貴の幻想が現れ“自分も姉にはなれなかった”と言い、自殺の意味を探ること/模倣することの意味のなさを告げる。

芸能人の虚飾や葛藤らしきものが扱われるとは言え、主題が些か曖昧。しかし、Wikipediaで加藤シゲアキについて調べると、グループの中で存在感が薄く、為に強みにしようと小説を書き始めたらしく、近くにライバルという存在を超えた目標がある為に却って芽を出すことができない大貴と重なり、加藤の心境小説と読めるところが面白い。彼の私生活を加えれば三重構造の物語と言えるだろう。

食わず嫌いは止めましょう。

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