映画評「ディザスター・アーティスト」

☆☆(4点/10点満点中)
2017年イギリス映画 監督ジェームズ・フランコ
ネタバレあり

不勉強にも僕は全く知らなかったのだが、2003年にアメリカで唯一館のみで公開された"The Room"という映画があるそうで、その余りの程度の低さに評価以前の扱いを受けたものの、次第にカルト映画になったらしい。
 その映画が公開されるに至るまでの過程にほぼ集中した実話もので、観ていない作品について比較できないことを承知で言うと、ご本家よりずっと映画になっていると思う。日本劇場未公開作品(を承知で観たのは珍しい)。

1998年、俳優を目指すグレッグ・セステロ(デイヴ・フランコ)が演劇学校で度胸だけは人一倍あるトミー・ワイゾー(ジェームズ・フランコ)と知り合って意気投合する。二人はロサンゼルスに引っ越したは良いが一向に芽が出ず、やがてグレッグの一言からトミーは自ら脚本を書き、その財力を生かして「ザ・ルーム」というタイトルの映画を作ることにする。主演は勿論当人たち。

というお話で、映画製作について全く知らないトミーの出鱈目ぶりが本作のコメディーたる所以なのであるが、ご本家を全く知らない僕の眼にはどうも可笑しさが空回りして余り面白くない。
 アメリカでの評価がかなり高いのはご本家を知っている観衆がその模倣ぶりに受けたという面が相当にある、ということが、最後にご本家と本編の場面が同時に流されるところのそっくりぶりから伺われるのである。完璧にシンクロしているのは、主演女優ジュリエット・ダニエルを演じたアリ・グレイナー。

本人がシリアス・ドラマのつもりで作ったのに観客が哄笑する場面を観ていると、僕は日本映画「吸血鬼ゴケミドロ」(1968年)を思い出す。クエンティン・タランティーノが好きな作品と言ったとかでそれなりに高い評価を受けているが、反戦などをテーマに大真面目に作っているのに僕も大笑いしてしまったので、最近は滅多に出さない最低点を付けた。
 映画の評価は退屈かどうかだけで決められるものではない。一番大事なのは、狙いがいかに正確に効果的に表現できているかである。1968年というSF映画が漸く市民権を得たかどうかという時代背景(「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」が公開)を無視して、かの作品が最初から笑いを誘うような映画として作られたなどと考えることは全くできないわけで、狙いと結果が180度違った代表格が「吸血鬼ゴケミドロ」なのである。
 小学生の時に僕らが手に汗を握って真剣に見ていた「巨人の星」でさえ今ではお笑い扱いではないか。日本庶民のアニメや映画における鑑賞の成熟度が急激に上がったのは1980年代であろう(だから「ゴケミドロ」を笑わず真剣に見ていた一般客が当時は多かったと推測する)。

因みに、字幕や映画サイトではトミー・ウィソーと書かれているが、試写会での進行役がトミー・ワイゾーと発音していたのでそう記しておく。YouTubeでインタビューなど見ると、ワイソーと言っているケースが多い。僕の見た範囲ではウィソーはなかった。

勉強にはなりましたワイ(ゾー)。

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