映画評「未来のミライ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・細田守
ネタバレあり

未来の宮崎駿(?)こと細田守の最新アニメである。

アメリカのアニメ映画「ボス・ベイビー」の少年は弟が出来て、両親がそちらにばかり構うものだから面白くない。ここまでは本作の4歳の少年くんちゃん(声:上白石萌音)も全く同じ。
 かの作品では弟が実は大人であったが、こちらの妹ミライちゃんは普通の赤ん坊である。普通でないのは、くんちゃんが心にわだかまりを抱えて裏庭に出ると時空を超えてしまうこと。白昼夢のようにもタイムスリップのようにも見えるが、とにかく彼は未来のミライちゃん(声:黒木華)、人間化した愛犬(声:吉原光夫)、若き日の曾祖父(声:福山雅治)、将来の自分に遭い、先祖がいたからこそ家族が愛情を紡いで来たからこそ現在の自分があり、将来の自分があると知り、少しだけ成長する。

4歳だから劇的に成長しないところが良い。アメリカではアカデミー長編アニメ賞候補になるなど評価が高いが、肝心の日本ではいけない模様。そうした差が一番出るのは、一つはお馴染みの監督のアニメ作品ともなると期待値が高くなってしまうからだろう。

本作の場合は、また、アテレコの声に問題があってオリジナルを見る日本ではそれが不評を引き起こした最大原因の様子。僕は、声優シンパと違って、わざとらしすぎて少しも本当らしくない専門声優のアテレコが大嫌いだから、スタジオジブリや細田監督が俳優や素人を使うことを寧ろ歓迎している。
 しかし、本作の場合、上白石萌歌の声が4歳の少年の声には聞こえないという意見には賛同せざるを得ず、足を引っ張ったことは否定できない。当初の予定通り本当の子供を使うべきであっただろう(日本アニメは殆どの場合大人の女性が子供の声を当てるが、欧米に倣って本当の子供を使ってほしい)。

声優の話も出たので他の声を紹介すると、お父さんは星野源、お母さんは麻生久美子、おばあさんは宮崎美子、おじいさんは役所広司が当てている。

内容的には、4歳の少年の視点で描かれるということもあってタイムスリップなのか白昼夢なのか曖昧なのが大人の鑑賞者に不満となると思われるが、ずっと家族を扱ってきた細田監督が家族の関係という問題をより深く掘り下げる狙いがあるわけで、観客が自らのジャンル映画的な関心と齟齬することを以って貶めるのであれば筋違いと言わなければならない。
 テーマは上にまとめたストーリーで説明したように、自分がここにあるのは先祖のおかげであるということに収斂していくが、新味には欠けるので、少なくとも細田監督を初体験する作品としてはお勧めしかねる。

しかるに・・・。
 両親によれば、次男の僕は出来の良い子供だったが、兄はくんちゃんみたいな子供だったらしい。兄は欲しいものがあると道に倒れて“買ってくれ”を連呼する。母は無視してそのままバスに乗ろうとする。仕方なく兄は立ち上がって追いかけて来る。そんな話をよく聞いた。
 翻って、育てる親の立場では“そういうこともありました”と納得できる部分が多く、納得するのが難しいであろう若い人にも反面教師として見る価値はある。“ミライちゃんだけでなく、くんちゃんにも愛情を注がなければダメだろう”という主旨の意見を目にしたが、ミライちゃんにだけ愛情を注いでいるわけではない。生れたばかりの赤ん坊は、他の子供に注意が行かないほど手がかかるものである。

国際タイトルはMirai。IMDbで調べると、ロシアでは「未来からのミライ」というタイトルで公開された。感覚的には in the future ではなく、これ(from the future)が正確なような気がする。いずれにしても、日本語の駄洒落は反映されていない。

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  • 「未来のミライ」

    Excerpt: 主役のガキを好きになれなきゃだめでしょ。 Weblog: 或る日の出来事 racked: 2019-05-24 14:03
  • 未来のミライ

    Excerpt: 4歳の甘えん坊の男の子くんちゃんの家に、妹ミライちゃんが産まれました。 ミライちゃんに両親の愛情を奪われ、戸惑うくんちゃん。 そんな時、くんちゃんは自分のことを“お兄ちゃん”と呼ぶ、“未来からやってき.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-05-26 02:20
  • 『未来のミライ』('18初鑑賞52・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆-- (10段階評価で 6) 7月20日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 11:50の回を鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2019-05-26 13:30