映画評「リズと青い鳥」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・山田尚子
ネタバレあり

原作は女性小説家・武田綾乃の小説「響け!ユーフォニアム」シリーズの一つであるが、映像作品としてはTVアニメ・シリーズの新作劇場用映画という扱いになるらしい。

北宇治高校吹奏楽部に所属する三年生の親友二人・内向的な鎧塚みぞれ(声:種崎敦美)と明るい傘木希美(声:東山奈央)の友情模様の移ろいを、彼らが演奏する楽章のモチーフとなった童話『リズと青い鳥』の登場人物の心情と重ね合わせる形で、繊細に描き出す。
 若者の読解力劣化が叫ばれる今日この頃だが、この作品の内容がほぼ解るのであればそう捨てたものではない。文章を読むのと映像作品の理解・読解は全く同じではないにしても、本作のような心情の揺れを感じ取る能力には文章の行間を読み取るのと同じくらいの能力が必要なのではないかと思う。

一般論はともかく、もう少し具体的に物語に触れると、楽章『リズと青い鳥』の肝を成すオーボエとフルートの掛け合いがどうも噛み合わない。それは、一方にオーボエ奏者のみぞれにフルート担当の希美に見限られたくない心情があり、他方に希美にみぞれの才能に対して複雑な心情があるからである。
 二人とも少女に化身した青い鳥に希美、彼女を引き留めていたいリズにみぞれをダブらせていたのだが、物語はリズが青い鳥の少女を解放して終わるという実際の二人とは違う関係がある。コーチに“青い鳥”の立場で考えてみようと進言され、希美への思いを一新したみぞれは才能に見合った演奏を披露する。結果的にこれにより二人は自らの精神的呪縛を解き放ち、壊れかけていた友情が刷新されるのである。

女子高の生徒間には、その在籍経験のない我々には解らない隠微な心情があるように見聞するのであり、それは極めて同性愛に近いものであるも同性愛とは違う感じを抱く。僕も所属したことのある男子校ではこうした微妙な心情はなかったように思う。それが本作の主題ではないものの、隠微にして微妙な二人の親友の友情模様にその影を感じなければ嘘になるだろう。

友情の帰趨を描く上っ面だけを理解すれば、ある人の言う“小学生が考えるようなお話”なのかもしれないが、小学生どころか大人でもこの登場人物の心情がきっちり解る人がどれくらいいようか。そのくらい隠微(淫靡ではないですぞ)な心情を繊細至極に綴っているわけで、僕も一々の場面に完全な理解に達してていないと感じるのである。採点が中位どまりなのは寧ろその為である。世界になかなか類を見ない日本独自の細やかなアニメ的作品世界という印象が強い。

青い鳥と言えば、同世代の森昌子が引退を発表したなあ。意図的に連想の間を抜かしたので、若い人には解らないかな。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2019年04月05日 07:39
 一切モノローグを廃し、セリフも必要最小限に抑えられ、二人のヒロインの描写をキャラクターの目線や手足の動きで表すという、前作「聲の形」のレベルよりさらに高い段階に達したことを強く感じましたね・・。
プロフェッサーの点数には異議申し立てをしたい(笑)くらいでした(後半部分の評論を読んで納得しましたが・・)
実は、去年、高崎経済大に合格した姪が、高校の吹奏楽部でオーボエを担当、合格祝いにぼくがオーボエをプレゼントしたのですが、セミオートとフルオートがありまして、フルオートは高価で中古でも100万からします。
僕が買ったのはもちろん安いほうでしたが(笑)

>極めて同性愛に近いものであるも同性愛とは違う
今の人なら百合や、ガールズ・ラブの一言で括ってしまうのでしょうが、僕には、彼女たちは戦前のエスのような、文学上の関係に近い感覚なのだろうなと思えましたね・・。

 決して難解な作品ではないのですが、実写で作った場合、俳優の台詞と演技で内容を理解するのに、ある程度の国語力、読解力が必要になるでしょうが、アニメの場合、人物の瞳の揺れ動きなど、細かい描写が可能になるのでさほど苦労なく観客{主に現代の若者}に伝えることもできるでしょう・・。

僕は、この映画を劇場で観ましたが、隣に座った中国からの留学生の女の子と映画が終わった後に話をしまして、彼女が十分に作品理解ができているなと感じました。

僕は、その中国人留学生にアニメ好きな姪のアドレスを教えたのですが、その後、同学年の彼女たちはこの作品のように仲良くなり、高崎音楽センターで催された姪の大学の吹奏楽部定期演奏会で、彼女たちは再会、映画が中日友好に一役買ったという後日談でした・・。
浅野佑都
2019年04月05日 07:58
>青い鳥と言えば
桜田淳子のような美人が中学の同級にいたら、僕など口も利けなかっただろう自信がありますねぇ(笑)・・。
森昌子なら(彼女も十分にかわいいのですが)二人で放課後、担任から頼まれたクラス委員の業務でもやったかも?
オカピー
2019年04月05日 21:45
浅野佑都さん、こんにちは。

>高崎経済大
おめでとうございます。もう2年生ですか。証文の出し遅れでしたね(笑)
ドラッグストアに勤めている大きいほうの甥が試験を受けるというので、ここ2年で二回連れて行きました。親が平日はいないのでそういうことになりましたが、二往復したのにお礼もない。失礼なやっちゃ(笑)

>戦前のエス
芸術を通していますからそういう印象が強いですね。
エスは、恐らく男尊女卑が甚だしかった時代の男性を回避したいということで発生した観念と思います。戦後女性の自由度が上がったことで、“ものほん”の人が同性愛者になっていったのでしょう。

>瞳の揺れ動き
そうねえ、実写ではこれはなかなか難しいですねえ。
瞳と言えば、親友の二人の瞳の色と童話の中の登場人物の髪の色とを一致させていたと思われます。当然青い瞳のみぞれが青い髪の少女(青い鳥)に相当すると理解するわけでして。
オカピー
2019年04月05日 21:47
続きでござります。

>中日友好
それは良かったです。
民間レベルでは報道されるほど悪い関係ではないと思っていますが。
今は寧ろ韓国との関係が問題であるくらいですが、僕は大昔から“韓国人は昔から日本人が好き”という説を唱えています。この間も韓国で売れている小説トップ20のうち11が日本の小説と池上さんの番組で紹介されたのも、我が意を得たりでした。

>中学
そういう印象を二人は与えますよね。

私事ですが、合併した中学に万人が認める美少女がいまして、何と二学期に同じ班になり、しかも彼女は僕の後ろの席。色々と面白いことを言うのをこっそり聞いていましたが、後年すっかり女性と話すのが得意になった僕ならもっと突っ込んだ質問をしていたでしょうねえ。誕生日、趣味、好きな芸能人etc.
班長になった僕はわざと厳しく彼女に接したり、彼女が間違えた英語の答えを正しく答えたり(今でも憶えていますが、Buy me a book.を言い換えさせる質問で彼女がBuy a book to me.と言い、僕がBuy a book for me.と答えたわけです)。てなわけで、余り好かれなかっただろうなあ。
残念ながら3年では別のクラスに。惜しいことに、8クラスあるなかで隣のクラスでした。学校に行く楽しみが減りましたよ。後年村下孝蔵の「初恋」を聞いた時に、これはあの頃の僕の心境を歌っていると思いましたねえ。

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  • リズと青い鳥

    Excerpt: 北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルートを担当する傘木希美。 高校3年の最後のコンクールの自由曲「リズと青い鳥」には、オーボエとフルートが掛け合うソロがあった。 「親友」のはず.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-04-04 13:07