映画評「スイート・チャリティ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1968年アメリカ映画 監督ボブ・フォッシー
ネタバレあり

フェデリコ・フェリーニの作品群の中で一番好きと言って良い「カビリアの夜」(1957年)の舞台をアメリカのニューヨークに移してミュージカル映画化したボブ・フォッシーの映画監督デビュー作。お話の骨格は「カビリアの夜」と大体同じだが、幾分マイルドという感じ。再鑑賞。

ニューヨークのダンスホールでホステスをするシャーリー・マクレーン(役名チャリティ)は、上腕に刺青まで入れて尽くした男にバッグを奪われた挙句に橋から落とされても、男を疑いたくない。やがて踏ん切りをつけた頃彼女は、恋人と痴話喧嘩をしていた有名な映画俳優リカルド・モンタルバンと知り合って、彼の家で一晩を過ごす。途中でくだんの恋人がやって来た為特段のことなく終わるも、彼女は何となく幸福な気分になる。
 しかしこんなヤクザな商売では仕方がないと上昇志向を持って仕事を求めても資格を何も持たないため就職斡旋事務所に冗談と思われて終わった後、エレベーターの故障が縁で内気な保険会社社員ジョン・マクマーティンと親しくなって遂に結婚することになるが、実直な彼は彼女が腕に残した刺青の為に彼女の過去を無視できなくなり結婚登録所から逃げて行ってしまう。
 人を恨まない彼女がさすがに凹んでいると、朝の陽光きらめく中フラワー・チルドレンが現れる。彼らの明朗さに触発されて、彼女は顔を上げる。

「カビリアの夜」の最後の男フランソワ・ペリエは結婚詐欺師だったから、こちらのマクマーティンのほうがましではあるが、しかし、ヒロインにしてみれば、却って悪党の方が救われたのではないか。気遣いなど邪魔になるだけだろう。

心理描出の木目細かさでは「カビリアの夜」に及ばないが、愛情の証拠である為に愛情を失わせることになる刺青の小道具としての使い方はアメリカ映画らしい巧さ・・・と感服させるものがある。

ミュージカルとしては群舞が多い。楽しいものも少なくないが、できればもっとミュージカルに徹した方が断然ゴキゲンになれたと思う。長いのは(一部で言われる)ミュージカル部分ではなく、ドラマ部分なのである。

寂しい笑顔ではジュリエッタ・マシーナに比べると分が悪いが、当時のアメリカではシャーリー・マクレーン以外には考えられない好配役。

僕も台湾でダンスホール・ホステスと踊ったことがある。時間が来るとそれまでの親しさが嘘のように離れて行ったのが印象的だった。日本も昔はこういうホステス業が結構盛んだったらしい(戦前の小説によく出て来る)。

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