映画評「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年ベルギー=アイルランド合作映画 監督メアリー・マクガキアン
ネタバレあり

建築にはさほど詳しくないが、“住宅は住むための機械である”と言ったル・コルビュジエの名前くらいは知っている。タイトルに名前は冠せられているが、主役ではなく、狂言回しである。主役は彼の建築家仲間のアイリーン・グレイ。しかし、厳密には、彼女が南仏の海辺に作った別荘(ヴィラ)E1027が主役と言うべきであろう。

1920年代、家具デザイナーとして既に有名であった女性デザイナーのアイリーン(オーラ・ブラディ)は建築評論家ジャン・バドヴィッチ(フランチェスコ・シャンナ)と恋人関係になり、二人が快く過ごせることを目的にした別荘を作ることにする。それがE1027である。
 ル・コルビュジエ(ヴァンサン・ペレーズ)は家が気に入ってミニマリズムの家の壁に絵を描くが、アイリーンが女性関係にルーズなバドヴィッチと決別して家を出た後、第二次大戦が始まる。戦後二人は再会するが、程なくバドヴィッチは死ぬ。
 1966年ル・コルビュジエは自分の設計と世間に誤解されていた家の前の海で心臓発作で死に、眼を悪くして引退していたアイリーンはその10年後に亡くなる。

アイリーンは、“住宅は住むための機械である”とするル・コルビュジエの理論のアンチテーゼとして自らの家を設計してきたわけで、彼も“彼女にとって家は愛の表現である”と理解する。彼のこの見解が本作の全てと言って良いのではないか。

映画は、彼女のスタイルと同様固定カメラによるミニマルな設計になっているが、会話の最中に、語り手であるル・コルビュジエの内面の声が聞こえたり、画面に向かって話す“第四の壁を破る”演出が加えられている。全体のミニマルな画面設計とそうした演出とがちぐはぐな印象を起こし、匠気を出し過ぎている感じで余り気に入らない。
 当初、音楽と画面を中心に進める一種の映像詩のようなものかと感じたのだが、全編をこれで貫いたほうが美しい作品になったろう。

監督はアイルランドのメアリー・マクガキアンで、故国の偉人であるアイリーンを同じ女性芸術家として表敬して作った感じがする。

今、ル・コルビュジエに関する催し物が国立西洋美術館で行われている(5月19日まで)。そのタイミングをはかっての放映だったのかな?

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  • ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

    Excerpt: 1920年代、フランス。 のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、気鋭の家具デザイナーとして活躍していた女性アイリーン・グレイと出会う。 彼女は恋人である建築家で評論家のジャン・バドヴィッチとコンビを.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-03-18 11:25