映画評「空海-KU‐KAI-美しき王妃の謎」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年中国=日本合作映画 監督チェン・カイコー(陳凱歌)
ネタバレあり

夢枕獏の伝奇ミステリー「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を映画化した、中日合作(監督が中国の陳凱歌なのでこう書いておく)の超大作であるが、興行収入も評価も日本では伸び悩んだらしい。中国・日本の歴史を知らない人が観ても、或いはそれに通暁している人でもその部分を除くと大して面白くなさそうな内容だから、やむを得ませんか。

9世紀の始め、密教の奥義を得ようと唐に渡った空海(染谷将太)は祈祷師として招聘されて皇帝の臨終の床に臨み、役人で詩人の白楽天=白居易(ホアン・シュアン)と知己になって、どうも皇帝の死は頻々と周辺に出没する黒猫の呪いであり、白楽天が玄宗と楊貴妃をテーマに創作中の「長恨歌」に関連しているらしいことを掴む。

空海を主人公にしながら、抹香臭い僧侶としての面ではなく、事実上の探偵役として活躍させたのが新機軸。とは言え、先日の「ラプラスの魔女」の主人公同様に主人公のような狂言回しの位置であり、「長恨歌」から想像されるように楊貴妃の最期をめぐる歴史の謎を場所や人々を歴訪することによって解き明かすという内容。

その中でも注目すべきは、唐の高官にまでなった阿倍仲麻呂(阿部寛)が重要な役割で出て来ることで、阿部氏が楊貴妃のトリッキーな死に関連していたかもしれないという発想が面白い。面白いと言えば、彼女が本当に死んだかどうか関係者の誰もが解っていないというのも面白いと言うか可笑しい。
 しかし、“面白い”と言うのは言葉の綾であって、それを延々と引っ張っていくこの終盤が実は、訳の解らない論争を聞かされているようで余り面白くない。

反面、陳凱歌の作品だから画面は華美で見どころ満載。本作のCGレベルを酷評する人がいるが、僕の観た大半の中国映画ではこの数百倍劣っているものばかり。紙芝居の絵並みと言っても嘘にならないレベルだ。そもそもアメリカ映画のCGも一部作品を別にするとそれほどでもなく、TVで観ると平均的には日本映画のほうが良く見える。アメリカ映画は見せ方がうまいということだろうか?

因みに、原作由来か翻訳の問題か、二人がこの謎を解くとしたら楊貴妃の死の50年後くらいになるはずなので、頻繁に出て来る30年という数字は奇妙(楊貴妃が亡くなったとされるのは紀元756年、空海が唐に渡るのが804年、白楽天が「長恨歌」を発表するのが806年)。

「白氏文集(白楽天の詩文集)」は平安時代の日本で大人気で、「文選」と共に貴族なら大概読んでいたらしい。そうそう、阿部寛が阿倍仲麻呂を演ずるというのがおかしいね。

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  • 空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎

    Excerpt: 1200年以上前、日本から遣唐使として中国・唐に渡った若き天才僧侶・空海は、詩人・白楽天(のちの白居易)との交流を深めていく。 その頃、世界最大の都・長安の街では、権力者が次々と奇妙な死を遂げていた。.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-03-16 09:53
  • 『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』('18初鑑賞18・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆☆- (10段階評価で 8) 2月24日(土) OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン6にて 15:30の回を鑑賞。 2D:日本語吹き替え版。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2019-03-19 14:00