映画評「蝶の眠り」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年韓国=日本合作映画 監督チョン・ジェウン
ネタバレあり

アイドル時代から中山美穂には余り関心がなかったし、韓国との合作ということでさほど気乗りがしなかったのだが、それでもコミックを映画化した青春恋愛映画よりは楽しめるのではないかと思い観てみた。実際その通りで、1990年代後半に日本に韓国映画が紹介され始めた時代の作品を彷彿とさせるタッチが捨てがたい。

50代の成功した女流作家・中山美穂は、遺伝(家族)性アルツハイマーと診断され、最後と思われる作品を鋭意執筆中である。自らを鼓舞し気分転換を図る意味もこめて、旧知(元同級生?)の勝村政信の勤務する大学で文学講師をやってもみる。
 かくして彼女を尊敬する女子学生・石橋杏奈から親しい韓国留学生キム・ジェウクを紹介され、万年筆紛失事件で縁のできた彼を口述筆記の助手に迎える。録音したものを日本語の力を向上させたいと思っている彼にワープロに打ち込ませるのだ。そして、一種の疎外感を抱える二人の間に愛めいたものが芽生えて来る。
 しかし、自分のミスで愛犬が失踪した辺りから病気が進行を早め、やがて彼女は前夫の作家・菅田俊と図り、新作の完成後施設に移ることを決意する。
 若者は追い出されるような扱いを受け、“利用された”という失意のうちに韓国に帰る。2年後恨みを込めて彼女との関係を綴った作品を発表して成功を収めた彼が日本での出版の為に来日、すっかり記憶を失ってしまったらしい彼女を施設に訪れ、彼女が記憶のある時にテープに残した“記憶を失っても愛する者同士は解る”という発言に泣き崩れる。

謂わば“愛は永遠”という主題の物語で、恋愛の紆余曲折を眼目にした若者の恋愛映画とは違うしっとりした内容が年齢を重ねた世代の胸に迫る。
 この幕切れのテープ再生もなかなか味わい深いが、それ以上に彼女が言っていた“彼の足跡”の正体が解るところがもっと良い。一つは今は“偶然の図書館”となった彼女の蔵書に残る本のグラデーション、一つは一ヶ月などにおける促音の“カ”と“ケ”の区別である。最後の作品のテープ起こしの時に彼に“カ”と打たせたものを一部わざわざ“ケ”に変えさせたことにより、それ以外の部分に彼の足跡が残るのである。この辺りは作家をヒロインにした効果が繊細に発揮され秀逸と言いたい。これは日本語に精通していない外国人にはちと解りにくいところだ。原案・脚本も兼任した監督チョン・ジェウンは日本語に詳しいのだろう。石橋杏奈が森鴎外「雁」を読んでいたキムに同「青年」を勧めるところも芸が細かい。

韓国人の日本への好感度が言われるほど低くないと感じる。まだ今ほど日本文化が開放されていな時代に韓国に出張した時、韓国のビジネス・パートナーにカラオケ・スナック(?)に連れていかれた。日本の曲が大量に収められていてビックリした。彼が“これが実態だ”と言っていたような記憶がある。

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