映画評「リンゴ・キッド」

☆☆★(5点/10点満点中)
1966年イタリア映画 監督セルジョ・コルブッチ
ネタバレあり

ジュリアーノ・ジェンマ、クリント・イーストウッド、フランコ・ネロが主演していないマカロニ・ウェスタンをTVで見る機会は現在限られているが、この度NHK-BSが幾つか紹介してくれるらしい。その第一弾。

邦題は西部開拓時代の実在し「駅馬車」(1939年)の主役のモデルになったリンゴ・キッドであるが、イタリア語版では終ぞその名前は出て来ない。英語版では確かにタイトルが Ringo and His Golden Pistol となっているが、リンゴ・キッドのことなのかは定かでなく、実在のリンゴとも関係なさそうな話になっている。

メキシコ国境のとある町。アメリカの俳優マーク・ダモン扮するジョニー(リンゴのことですな)は黄金に目がない賞金稼ぎで、町の外れで賞金のかけられた悪名高い兄弟4人を倒す。兄弟のうち一人未成年のフアニト(フランコ・デ・ローサ)だけは助けてやるが、これが後にこの町を破壊する原因となる。
 フアニトは、武器所有の罪で留置所に放り込んだジョニーを引き渡さなければ味方に引き入れたインディアンの軍勢と共に町を攻撃するぞと武器・銃器の所有を一切禁じる保安官(エットーレ・マンニ)を脅迫するが、規則を遵守するのをモットーとする彼は頑として譲らない。
 これに怒ったフアニトはジョニーの恋人(ヴァレリア・ヴァブリツィ)を殺し、保安官の十歳くらいの息子を拉致する。猛烈な攻撃に万事休した保安官はフアニトをお尋ね者にしてジョニーを解放する。ジョニーは事前に用意した大量のダイナマイトを爆破させて、住民が退避してもぬけの殻になっていた街を破壊、最後にフアニトと一騎打ちとなる。

マカロニ・ウェスタン・ファンにはなかなか評価の高いセルジョ・コルブッチが僕は嫌いである。大して意味のないズーム・イン/アウトを多用してどうにも煩わしい。しかし、本作は少し見られるだけで、しかもそのうちの一つは珍しく効果的。具体的に言えば、両脇に崖が屹立する狭間でジョニーが止まる。カメラがズーム・アウトすると、待ち設けていたフアニトの一味がフレーム・インするのである。こういうのならどんどん使ってほしいくらいだ。結果的にコルブッチの作品としては臭みが少なくなって素直に楽しめる。

お話としては、保安官が留守の間に訪れて来た町の天敵一味を利用して脱獄、その間にダイナマイトを探り出し、保安官の帰って来た時には留置場で大人しくしている、というシークエンスが面白い。

リファレンス関係を言及すると、保安官と息子とジョニーの関係は「シェーン」(1953年)を恐らく軽く意識し、それ以上に「リオ・ブラボー」(1959年)から何点か拝借した印象がある。留置場が重要な役に使われたり、ダイナマイトで敵をやっつけたり、人物、特に、留置場にずっといたがるヘンテコな老人がウォルター・ブレナンを髣髴としたり。

翻って、いかにもマカロニらしいのは、主人公の大好きな黄金のシガレット・ケースが思わぬ大活躍をすること。「荒野の1ドル銀貨」(1965年)などマカロニはこういう小道具を上手く使う。

今の若い人には、リンゴ・キッドと言われてもピンと来るまいて。当時でも明らかに西部劇ファン向けの邦題だから、今となっては全く訴求力がなかろう。

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