一年遅れのベスト10~2018年私的ベスト10発表~

 群馬の山奥に住み、持病もあり、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2018年私的ベスト10は皆様の2017年にほぼ相当する計算でございます。
 スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしていており、その年の状況によってはとんでもない旧作を入れることがあります。今回は、果たして?

 2018年鑑賞本数は昨年と同じく361本、再鑑賞は63本でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品に関しては298本。昨年に引き続き300本を割りましたが、再鑑賞作品が存外少なく終わり、去年より12本も増えました。データを精査しないと解りませんが、前編・後編スタイルの映画が流行しているせいで日本映画が増えたのかもしれません。下記の顔ぶれを見れば解るように、ここ数年同様にアメリカ映画系列が健闘し、欧州大陸映画が不調に終わりましたね。

 洋画・邦画共にメジャー映画は若年層向けに偏り、総じて鑑賞後の物足りなさを覚えるケースが多い。残念ながら、この傾向が大きく変わることは金輪際ありますまい。我ら老兵は消え去るのみ(どこから?)。


 それでは、参りましょう。


1位・・・スリー・ビルボード
“怒り”と、そしてそれ以上に“怒りの抑制”をテーマにし、先が読みにくく興味を喚起し続ける話術の巧みさに唸る。勘違いして貰っては困るのは先が読めないのが良い作劇ではないという映画鑑賞における真実。先が全く読めないお話は興味を喚起し続けることができない。興味を喚起し続けることと、先が全く読めないことは似て非なるものということをよく証明する一編でした。

2位・・・女神の見えざる手
昨年唯一☆☆☆☆★を付けた優れた娯楽作。純粋に昨年一番面白かった作品ですが、ベスト10銓衡(選考)となるとそればかりではいけないので、ここに置く。ロビー活動をテーマに重層的どんでん返し(どんでん返しが繰り返されるの意にあらず)を眼目にした作品ですが、ヒロインが実は見た目と180度違う人間であったことに本当に驚かされました。接見弁護士「他のメンバーに黙っていた理由は?」ヒロイン「刑期は5年だから(仲間を巻き込むわけにはいかない)」

3位・・・メッセージ
時間が存在に与える影響という、非常に難しく深遠な哲学的テーマを大衆映画を通して見せたドニ・ヴィルヌーヴの手腕に感心。勿論哲学映画であるから生易しくはないけれど、興味をそそる要素を随所にちりばめて娯楽性に富む。ヴィルヌーブは「ブレードランナー2049」でも哲学を扱って才人ぶりを発揮、2018年の監督賞はこの哲学SF二作で文句なしに彼に決まりました。

4位・・・わたしは、ダニエル・ブレイク
弱い立場の小市民に視線を下降する時に真価を発揮するケン・ローチがその実力を見せつけた社会派の力作。社会派映画は得てして散文的になり、本作にもその誹りを免れないところがあるが、英国の現実が日本にも当てはまるところが多く、考えさせられた。

5位・・・セールスマン
今やベスト10常連となったアスガー・ファルハディの人間劇。相変わらずミステリー要素をてこに人間の人間たる所以を焙り出す手腕が見事。イスラム教における男女差別の激烈さを知らないと真価が解りにくいところがありますが、秀作であることには変わりがない。

6位・・・沈黙-サイレンス-
信仰の問題よりも、非キリスト教徒である僕には、信仰と民族性の関係を浮かび上がらせる内容に非常に興味深いものがありました。近年のマーティン・スコセッシの作品としてはダントツに気に入りましたね。

7位・・・スノーデン
ドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」の後に観たので実に解りやすく、メッセージ性にインパクトあり。映画としてはそれに尽きる。問題の多すぎる“共謀罪”法が施行された日に観たのもグッド・タイミング。

8位・・・光をくれた人
どちらか言うと純文学系や社会派の作品が多い中、高品質の人情映画という意味で、本作を選択しました。勿論これとて、人間性を測る選択の問題をモチーフにして文芸度も非常に高いわけですが、心に残るのは広義の人情。

9位・・・光(河瀬直美監督)
是枝裕和監督「三度目の殺人」も哲学的な考察が非常に面白い作品で、どちらにしようかと迷ったものの、“手法ありき”が気にいらなかった河瀬監督の進境を買って邦画で唯一入選の栄誉を。とにかく、視覚をテーマにした作品における、視覚という映画(映像)言語の鮮やかさに惚れ惚れしました。テーマと表現が一致したのが見事でしたねえ。

10位・・・ベイビー・ドライバー
内容だけを追えばこういう作品は論外になるが、僕はショットや場面の繋ぎの良い作品を観るとゴキゲンになってしまう。そういうのも十本のうちに一つくらいはあって良い。使われた既成曲の選択も秀逸です。

次点・・・ハクソー・リッジ
戦闘場面の迫力は近年で随一。ドラマ部分の表現がもう少し充実していれば上位に入れられたかも。

画像

ワースト・・・忍びの国
ジャニーズがいけないなんて狭量な観点ではありません。作品の性格・トーンが全く一貫しないのがいけない。韓国大衆映画はこの基本を殆ど守っていないので近年避けてきたのに、邦画でここまで性格が一貫しないのを見せられるとは。アクションもCG頼りで誠につまらない。

****テキトーに選んだ各部門賞****

監督賞・・・ドニ・ヴィルヌーヴ~「メッセージ」「ブレードランナー2049」
男優賞・・・マイケル・ファスベンダー~「光をくれた人」「エイリアン:コヴェナント」「アウトサイダーズ
女優賞・・・イザベル・ユペール~「未来よ こんにちは」「エル ELLE
脚本賞・・・ジョナサン・ペレラ~「女神の見えざる手」
撮影賞・・・ロジャー・ディーキンズ~「ブレードランナー2049」
音楽賞・・・ブリュノ・クーレ、KiLA~「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた

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この記事へのコメント

2019年01月13日 11:39
今年もよろしくお願いいたします。
いつもTBばかりですが。
「スリー・ビルボード」は我が家でも3位です。
「女神の見えざる手」は最近見て、おもしろかったですね。
「ベイビー・ドライバー」は2017年度の2位にしました。
オカピー
2019年01月13日 18:51
ボーさん、こんにちは。
今年もよろしくお願いいたします。

こちらこそコメントができずに申し訳ないと思っていますが、お互い本も読みますし、忙しい身の上ですからねえ^^;

>「スリー・ビルボード」
今年になる可能性もありましたが、WOWOWに早く出たので、今年度に。

>「ベイビー・ドライバー」
音楽好きにはたまらない作品でしたね。
2019年01月14日 13:16
こんにちは。いつもトラックバックでは大変お世話になっております。
私も昨年のベスト1は「スリー・ビルボード」でした。素晴らしい作品だったと思います。「メッセージ」は一昨年のベストでした。監督は天才だと思っております。
「ベイビー・ドライバー」は一昨年のベストの次点に入れています。気持ちのいい作品でした。
今年もどうぞよろしくお願いします。
オカピー
2019年01月14日 22:08
ここなつさん、こんにちは。
いつもTB貼り逃げで恐縮しております。

映画館鑑賞が事実上ない僕と、映画祭等での鑑賞が多いご様子のここなつさんとでは、年ごとの鑑賞作品にずれがあるわけですが、何だか評価自体は近そうですね。

こちらこそよろしくお願い致します。
浅野佑都
2019年01月18日 10:15
 新年早々から、(実家に帰った折に姪にうつされ)インフルエンザを発症してしまい、恒例ベスト10を見逃していましたが、流感も今は特効薬があるので普段とほぼ変わらぬ生活を送れたのは幸いでした・・。プロフェッサーはお変わりなく更新されていて、なによりです。

 さて、今年のプロフェッサーの一年遅れのベスト10ですが、この年に限ったことではないですが、骨太の作品が少なく、上位の2本は衆目の一致するところだと思いますが、目に付いたのは、「メッセージ」と河瀬直美の「光」。

「メッセージ」は、原作のほうは、地味ながら素晴らしいハードSFなんですが、映画にするにはやや難解な部分もあり、国際政治とからませたあたりはヴィルヌーヴ演出のセンス・オブ・ワンダーを感じますね!
ただ、相変わらずチャイナ資本に配慮してチャイナが鍵を握るという設定は,当の中国人さえこそばゆく思っているでしょうね(笑)・・。

 河瀬直美は、正直に申し上げて、僕は、彼女の作品にある種のおしつけがましさを感じていて(それが彼女の良さでもあると思いますが)苦手としていました。(更に言えば、作品の感想にいつも「もう少し・・」という思いを抱かせる彼女の映画を観るのはやや、疲れてしまう(笑)といったところでしょうか?)

とはいえ、よく言われるところの映像の美しさ、日本映画の美点を凝縮したようなやさしさを感じさせる作風自体は膝を乗り出してでも観るに値する・・。
浅野佑都
2019年01月18日 10:17
 続きます。
巷間、評判の良かった「あん」は、本来の彼女らしさが薄れてぼくにはつまらなく思えたのですが、河瀬ファンである件の19歳の姪いわく「観客に媚を売った(笑)」とのことでした・・。
この「光」は、彼女らしさを出しながらも、「だいぶん、角が取れてきたなぁ・・」と感じる良い仕上がりだと思いますが、主人公二人の恋愛要素はないほうがもっと良かったと感じますね・・。

河瀬直美の男ミューズである永瀬正敏とジュリエット・ビノシュが出演した直近の「Vision」は、最初にカンヌを取ったときを彷彿させるようなストーリーですが、これも角が取れていて、やはりこの人は「別の引き出しを持っていたな・・」と頷かせるものがありました。
例によって、ヤフー映画などは低評価ですが・・。

三年目に入るトランプ政権ですが、やはり、アメリカは保守が強いですね。東海岸やウェストコースト以外の地方都市に住む普通の主婦なんかは、(最近やや右寄りの)日本人の感覚からしても驚くほど保守的というか愛国的で・・。
この国は、当分、女性の大統領は誕生しないのではないですかね?
ヒラリーの足を引っ張ったのも、本来なら彼女に投票してもいいはずの女性たちでした。

西部伝統のレディファーストも、開拓に不可欠だった女手の必要性から生まれたアリバイ的なものでして、どうもこの国は、LGBTにしても(最近では男女どちらかを決めない「Q」もある)ポリティカルコレクトネスにしても、地上の目に見えるところだけを綺麗にしていたい、という所があり、地下ではそれが悪臭を放っている、といったら言い過ぎでしょうかね?
オバマが大統領になれたのは、肌の色が薄かったからと言ったらアメリカ人は否定するでしょうが・・。
オカピー
2019年01月18日 18:50
浅野佑都さん、こんにちは。

催促にお応え戴き、誠に恐縮です。

>インフルエンザ・・・今は特効薬がある
僕も一昨々年ひきましたが、確かに薬よく効きましたねえ。なるべく人に接触しないようにしないといけないのは不便ながら、本当に普通に過ごせましたね。

>ヴィルヌーブ演出
全く仰る通りで。初めて観た「灼熱の魂」から気に入った監督ですが、才人と思います。

>チャイナ資本
最近トランプ陣営の誰かが、米中貿易戦争の影響もあってか、中国におべんちゃろを使うのはそろそろ止めたほうが良いと言っていたような気がします。

>河瀬直美・・・おしつけがましさ
僕の“手法ありき”に通ずる苦手意識と思います。

>河瀬・・・角が取れてきたなぁ
右に同じ。そもそもタイトルが「あん」「光」と普通の単語になってきたところに僕は進境を感じるんですよね。以前「萌の朱雀」だの「殯の森」など雅語を使っていたのとは大違い。

>ヤフー映画
どこよりもミーハーが集まるので、大衆的な作品の評価は高く、純文学は低い。自分が解らない作品=駄作と決めつける人たちが多いですからね。

>西部伝統のレディファースト
同意。昨年ボーヴォワール「第二の性」を読んだ時に、結局男が自分が絶対的に有利であることを承知した上での女性に対する優しさなのであろうと、思いましたね。女性の人権を考えてのことではないと。
 女史に言わせると、カトリックがマリア様を大事にするのも男性のアリバイだそうな。

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