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zoom RSS 映画評「クイズ・ショウ」

<<   作成日時 : 2018/11/06 08:56   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1994年アメリカ映画 監督ロバート・レッドフォード
ネタバレあり

【キネマ旬報】誌の批評家ベスト10で何と8回もベスト1を取り、押しも押されもせぬ名監督になったクリント・イーストウッドに比べ、同じ俳優出身の監督ロバート・レッドフォードは相対的に或いは実力に比して過小評価されている。逆に、イーストウッドは強力なライバルがいないとは言え、日本特にキネ旬では過大評価されている、と思う。キネ旬の批評家にはイーストウッド信者が多すぎるのだ。

愚痴はともかく、レッドフォード第3作は実話ものである。現在に比べると実話ものがそれほど多くない時代で、映画として実にきちんと構成されている。
 この間観た傑作「女神の見えざる手」と同じく聴聞会が重要な舞台となる作品だが、実話ということもあり、かの作品のようなハッタリもトリックもない。二十数年ぶりの再鑑賞。

1958年アメリカに「21」という純粋に知識を問うクイズ番組がある。「クイズ・ミリオネア」と違って4択などではないから相当難しい。マッチ・プレイ方式で、夫々11点の持ち点からジャンルだけ明かされた問題に対し自由に点数を賭け、正解すると上積みされ21点に達すると勝ちとなる。両者が同じ問題を与えられないところがミソで、運不運の要素が多い。
 しかし、本作で問題になるのは、優秀なユダヤ人の回答者ジョン・タートゥーロが視聴率の伸びない原因とされて、スポンサーの命令でわざと負けを強要されるインチキ性である。彼の代わりに新ヒーローに選ばれるのがいかにもアングロサクソン系の好男子レイフ・ファインズ。一族がこぞって文学畑で名を成す名門出身である。
 タートゥーロは別の番組に出演させてもらえるというTV局の甘言を信じてわざと負けたのに仕事は来ず、そこで頭に来て大審院に訴え、ハーバード法科首席という若い上院調査会委員ロブ・モローが事実関係を調べ始める。
 八百長について確信を持ったモローとしては、高潔さを感じるファインズに大人しく退場してもらいたく聴聞会に呼ぼうとしないのだが、結局罪悪感に逆らえずファインズは自ら出るように仕向けるのである。

日本のもりかけ問題で官僚が一人でも事実を言えば事件は簡単に片が付いたし、恐らく自殺者も出なかったであろう。それを考えると、本作のファインズの高潔ぶりは感嘆するしかない。委員の一人が“事実を言っただけではないか”と否定的な意見を放つが、実際にはそう簡単なものではない。

主題は割合見えにくいが、現在に比べるとメディアが信用されていた時代性が逆に浮かび上がるような気がする。今は聴取者が小利口になってTVに限らずメディアが昔ほど信用されていない。ましてTVが本格普及し、全てリアルタイム(ビデオがないから録画放送というのは余りない)で行われていた半世紀以上前だけに、事実を知らされた観客の中には文字通りショックを受けた人がいたのではないかと思う。

善と悪は見た目通りではない、というファインズの言葉は嘘が蔓延する現在を生きる僕らだからこそ余計胸に響くが、かと言って自分が悪く言われると“フェイク・ニュース”の馬鹿の一つ覚えで反論する為政者を信用する気にもなれない。確かにある事項について牽強付会的に解釈し報道するということは、どこの国のどのメディアにもあると思われるが、ネットにおける個人の記事と違って全くの嘘というのは殆どないはず。火のない所に煙は立たぬのでござる。

“新聞を読むと馬鹿になる”と放言する若者が近くにいるのだが、“ネットで好きな記事だけを読んでいると馬鹿になる”と僕は反論したい。新聞もなるべく幅広く偏見を持たずに読むと多様な考えが持てるようになる。そもそも彼がそういう考えを持つように至ったのはネットの偏った記事しか読まないからだろう。

さて、本作の語り口は楷書である。モローが大学を卒業しクライスラーの新車に乗ってカー・ラジオを付け、ボビー・ダーリンの「マック・ザ・ナイフ」がかかり本編が始まるというところは洒落っ気があり、遊びと言えば遊びであるが、まことに巧い導入部と感心させられる。
 内容を考えると132分は長いかもしれないが、夫々タイプの違う3人の好演を見るだけで退屈しない。初見なら年間トップ5に入れられる出来栄え。

純粋に知識を問う視聴者参加型クイズ番組と言えば「クイズグランプリ」を思い出す。子供の頃から“物知り博士”と言われた僕は、年齢の割には正解率が高かった。高校対抗戦に出た同級生もいる。

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クイズ・ショウ
56年、アメリカ中をわかせたクイズ番組“21”。 ハービーは連勝を続けてチャンピオンの座を守っていたが、スポンサーは視聴率を上げる為、もっと若くハンサムな人をチャンピオンにしたいと考え、一計を策す…。 アメリカで実際に起こった事件の映画化。 ...続きを見る
象のロケット
2018/11/07 01:17

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
 以前にもコメントしましたが、ぼくは、俳優としてはイーストウッド、監督ではむしろレッドフォードのほうが正統派であり才能もある、と思っています。イーストウッド作品に共通する外連味は、ぼくの好物とするところなのですが・・。

>新聞を読むと馬鹿になる
読まなければ、の間違いでしょうね・・。ただ、昨今の新聞広告の異常な多さには呆れますが・・。昔は一流企業の証と言われた一面掲載の価格が、部数の減少により下がっているせいで怪しげな健康食品の広告まで載るように・・。
分厚い日曜版など、昔は珈琲を飲みながら1時間かけて隅々まで読んだものですが、今ではその半分程度・・。

数学者の新井紀子氏によると、AIの難関私大合格率は9割近くで、進学校生徒の平均値をはるかに上回るそう・・(高度な読解力が必要な東大合格は、現在の技術では無理)
若者のリーディングスキルはAI以下・・とほほ。

>幅広く偏見を持たずに
投書欄は必ず読むようにしています。

>クイズグランプリ
同番組のほかベルトクイズQ&Q エンターテイメント性が強いクイズ・タイムショックなどを観ていました。

Q&Qは、増田貴光司会のころからのファンで、アシスタントになった岸ユキが好きでした・・。

タイムショックは、回答者と同時に答えた場合は不正解(最初の言葉に誘発された疑いがあるため)という厳しいルール(笑)を自分に課したため、最高で11問正解でした(12問で全問正解)
芸能人大会で、加山雄三や山東昭子がパーフェクトを取ったとき、普段と比べて、あまりの出題レベルのイージーさに子供心に憤慨したのを覚えています(笑)
浅野佑都
2018/11/06 11:33
レッドフォード監督の今の所の最高作と思っています。双葉さんも☆☆☆★★★を付けながら、他の☆☆☆☆作を押しのけてその年のナンバー1に押されてますね。
三人の男をバランス良く描きながらTV業界の矛盾というか負の体質を描き出した社会派の良心作と思います。
十瑠
URL
2018/11/06 12:01
浅野佑都さん、こんにちは。

>監督ではむしろレッドフォードのほうが正統派
そうでしょうね。本作は一番娯楽性が高いですが、詩的な作品も良いです。
イーストウッドの作品は面白い。1980年代以前のように欧州に力のある監督が不在なので、アメリカの馬力ある作品が優勢なのは理解できますが、ちとひどい。「ジャージー・ボーイズ」なんてきちんとできているにしても中級作品ですよ。

>若者のリーディングスキルはAI以下
さもありなん。
 しかも、これから国語の入試は文学を排除(法律文や契約書などの読解に特化)していくようですから、小説も映画も理解できない人が増えていくでしょう。外国のビジネスマンは人文の教養がありますよー。あーっ、恥ずかし。
 文科省は人文系を冷遇しているので、母校から寄付金の要望が届きましたよ。

>投書欄
僕もこれはかかしません。社説はさほど重視していません。東京新聞は【こちら特報部】のほうが面白いですね。

>増田貴光
ああっ、昔映画の解説もしていましたね。懐かしっ!
余り見た記憶がないと思ったら、平日昼間の放送だったんですね。

>タイムショック
そのルールはきついですよ^^
「いま何問目?」という問いに正解した例が(勘での正解を別にすると)殆どなかったです。
オカピー
2018/11/06 21:59
十瑠さん、こんにちは。

>他の☆☆☆☆作を押しのけてその年のナンバー1に
そうでしたっけ。
双葉さんはレッドフォードがお好きでしたね。いかにも師匠好みの詩情溢れる「リバー・ランズ・スルー・イット」「モンタナの風に抱かれて」も高い評価をしました。

>三人の男をバランス良く描きながら
それがこの映画を優れた作品にした最大の要因かもしれませんね。
面白かった。
オカピー
2018/11/06 22:16
私も日本でのイーストウッド神格化にくらべてレッドフォード監督作の扱いが地味なのが歯がゆいのですが、さすがにここではみなさんレッドフォード作品を高く評価してくださっていて、安心できます。イーストウッド映画にはB級作品的おもしろさがありますけれども、レッドフォードは王道を歩んでますね。絵がとにかく美しいですし。
この映画ですが、大学教授でしたかね、お父様が土壇場に来て、意外に家名に傷がつくからとかそういうことを気にしているのが分かるのが印象に残っています。
あと、オカピーさんがおっしゃるように、このころはまだテレビ番組も見る方が素朴に真剣に見ていたんだなと、いまよりいいのかわるいのか、判断に苦しむところですが、今は作る側が見る側に馴れ合ってもらえることをあてにしてるようなバラエティが増えていて、誰が見てもおもしろいものではないし、嫌なら見るなということで見ませんけれども、こうなるのは見る側も悪いんだろうなというのもあります。
nessko
URL
2018/11/09 00:43
nesskoさん、こんにちは。

>レッドフォード作品
このブログに来られる方は、nesskoさんだけでなく、レッドフォード作品の価値を理解する人が多いようです。有難いことです(笑)

>大学教授
割合良い感じの方ですけど、息子の高潔さに比べると劣りました。

>こうなるのは見る側も悪いんだろう
そう思います。
新聞のTV欄の投稿を読むと、TV番組の程度の低さへの指摘が多いのですが、僕はTV局の問題という以上に視聴者の問題だと大分前から言ってきました(笑)
オカピー
2018/11/09 20:48

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