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zoom RSS 映画評「オン・ザ・ミルキー・ロード」

<<   作成日時 : 2018/11/13 11:01   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年セルビア=イギリス=アメリカ合作映画 監督エミール・クストリッツァ
ネタバレあり

エミール・クストリッツァが主演も兼ねて作った新作である。本作に限らず、彼の作品はお話ではなく、その独自の見せ方に見どころがあるわけだが、勿論お話を書かなければ何のことか解らないだろうから、軽く触れておきましょう。

戦争中の某所(勿論1990年代のユーゴ内戦を想定)。戦地の中をミルクを運んでいる男クストリッツァは、供給してくれる農家の娘スロボダ・ミチャロヴィッチに惚れられているが、彼女が軍人の兄プレドラグ・マノイロヴィッチと結婚させる為に連れてきたイタリア美人モニカ・ベルッチと互いに憎からず思い合う。しかし、彼女は自らに入れ込んだ連合軍の将軍の妻殺しを証言した為に命を狙われる立場にあり、やがて服役中の将軍の命を受けた軍人三人が村を急襲、村を焼き尽くす。毒蛇に襲われた為に現場にいなかったミルク運びは井戸に隠れて難を逃れたモニカと逃避行を続けることになる。

前半と後半とでは別の映画のような感じである。
 前半はクストリッツァらしく、動物の生態を人間の狂態に絡み合わせた猥雑さが目を引く。しかし、スラブ地域らしい荒涼とした風景の中に点出される野趣が魅力を発散するものの、猥雑に過ぎてゴキゲンになりきれない。ただ、こんな作品世界を一貫して作れるのは、優れた映画人は世界に多いと雖も、他にはかつてのフェデリコ・フェリーニくらいしかいないと思う。
 後半は、次々と命が失われ、どうしても悲劇的なトーンになり、幻想的に見せるところもあるが、全体として重苦しく感じられる。

クストリッツァ扮する主人公が羊やモニカが爆死した地雷原を石で覆っていく様子を描く幕切れは、俯瞰の効果が大いに発揮され、人間の営為の悲しみにジーンとさせられてしまう。

という次第で、激しい好悪を呼ぶ可能性はあるにしても、戦争と愛が織り成す人生模様が時にユーモラスに時にペーソスたっぷりに綴られることで現実社会が戯画的に浮かび上がり、なかなか充実の一編と言って良いのではないか。

タイトルは天の川(ミルキー・ウェイ)を意識しているかな?

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オン・ザ・ミルキー・ロード
隣国と戦争中のとある国。 右肩にハヤブサを乗せた男コスタは、銃弾をかわしながら毎日ロバに乗り前線の兵士たちにミルクを届ける配達係。 ミルク屋の娘ミレナはコスタに想いを寄せており、英雄である兵士の兄と同じ日に結婚式を挙げようと、ワケありの美女を兄の花嫁にと見つけてきた。 ところが、その花嫁とコスタが、出会った瞬間に惹かれ合ってしまう…。 コメディ。 ...続きを見る
象のロケット
2018/11/14 00:41

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
20年前「黒猫・白猫」を観て以来、
好悪のハザマをかいくぐりながら
やっぱり最後まで観てしまう稀有な
クストリッツア作品。
おっしゃられるように話自体よりも
各映像の羅列に翻弄されながらいつか
ラストを迎えてるという感。
何せコメ文化には考えつかない
パワフルさです。
監督の息子さんが音楽担当のようです。
音楽がまた独特の世界を後押しして
効果的でした。

>フェデリコ・フェリーニしかいない

御意。
vivajiji
2018/11/13 12:31
vivajijiさん、こんにちは。

>好悪のハザマをかいくぐりながら
正にその表現がぴったりですね。

>パワフルさ
フェリーニもパワフルでしたが、南欧系はこの辺りが凄い。

>音楽
セルビアはトルコに近いバルカンですから、西洋と東洋の中間的な感じもあって面白かったですね。
オカピー
2018/11/13 19:05

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